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竜魔伝説  作者: 融合
暗黒大陸編
182/234

181話 ユーラシア vs バーベルド 〜エルフの都決戦〜

 ミラエラとエルナスは邪魔にならないよう、勇者とユキの下まで後退する。

「感じる・・・・・この樹はまさか、ボクが竜王だった頃のもの?」

 ユーラシアは目の前に聳え立つ巨大樹に自分と近しい何かを感じ取る。

「エルピス。ミラたちのことお願いしてもいい?」

 エルピスは不安そうにユーラシアへと顔を擦り付け、細やかな鳴き声を上げる。

「頼んだよ」

「まぁ死んでねぇとは思ってたけどよぉ、随分と雰囲気違ぇじゃねぇかよ。はっ、そんじゃてめぇを先に殺して魔王への手土産にしてやらぁ」

 バーベルドは面白おかしく笑みを浮かべる。

「アートくんとはもう、仲間でも何でもない。だからボクを殺してもアートくんは何とも思わないはずだよ。だけど、君じゃ今のボクには勝てないよ」

 その瞬間バーベルドから笑みが消え、ものすごい形相でユーラシアへと睨みを利かせる。

「あぁ? 前あんだけボコられといて、まだ俺との実力差を分かってねぇのかよ」

「今のボクは君より強い」

 その言葉を皮切りに、バーベルドは予備動作なく先ほどよりも速さを増してユーラシアとの距離を詰めると、ユーラシアの顔スレスレまで拳を迫まらせる。

 やられたらやり返す。

 まずは先ほどの一発を返そうと放ったバーベルドの拳は空を切り、気がつくと天を仰いでいた。

「あ?——————」

 ユーラシアの手のひらがバーベルドの視界を覆い、地面へと叩きつけられる。

 地面は衝撃に耐え切れずにヒビを生じさせ、そして割れた。

 


「——————信じられん強さだ」

「ユーラシアの邪魔にならないよう、私たちはもっと遠くに移動しましょう」

 勇者とユキも既に『超再生』の魔法陣効果で回復済み。

 四人とエルピスはユーラシアとバーベルドから距離を取るため、ユグドラシルの魔力樹のてっぺんへと移動する。

 

「なるほどな。完全に前とは別モンってことか。面白れぇ、ぶち殺してやる」

 態勢を立て直した直後に放たれるユーラシアの拳を次は受け止め、逆にユーラシアの顔面へとバーベルドの拳が直撃する。

「ハッ、大したこと——————グハッ!」

 バーベルドの油断した一瞬をつき、ユーラシアの更に重たい一撃がバーベルドの腹の奥深くまでめり込んでいく。

 たまらずに吐血するバーベルド。

 しかし、今回は一切吹き飛ぶことなく、完璧に拳から伝わる全ての力の衝撃がバーベルドの体を侵食した。

「ハァハァハァハァ——————てめぇ一体何しやがった!」

 地へと膝をつくバーベルド。

「君には手加減する必要がないから、ただ全力で拳を振るっただけだよ」

 次第にユーラシアから湧き上がってくるとてつもなく濃い魔力の気配。

「ざけんじゃねぇぞ・・・・・今までは、魔力使ってなかったとか言うんじゃねぇだろぉな」

「ボクの大切な人たちを傷つけようとする君たちを、ボクは絶対に許さない!」

「上等だ、クソがぁ‼︎」

 バーベルドとて日に日に成長しているのだ。

 ようやく神の胃袋を使用し、ユーラシアに負わされたダメージを全て回復させた後、既に作り上げていたマンティコア計十体を出現させる。

「前のマンティコアはやられちまったが、新しく改良した俺のペットたちだ。殺れ‼︎」

 マンティコアたちは四方八方に散らばりユーラシアを取り囲む。

 

「『竜拳』」

 

 両手を真っ赤な灼熱の魔力を纏った鋭い爪の形へと変化させた後、軽く腕を振ったその衝撃のみで計十体ものマンティコアを一瞬にして塵にしてしまった。

 しかし、周囲の環境への配慮もあって手加減して放った『竜拳』の魔力は、バーベルドにより吸収される。

「返してやるよ、おまけ付きでな!」

 バーベルドから放たれたのは、竜拳による竜の手の形をした高密度な大量の魔力と、先ほどミラエラから吸収したエーテルアイスによる絶対零度以下の魔力。

 更に、見たこともないような魔物や魔法生物、センムルたちが大量にユーラシアへと迫る。

 あまりの規模により、バーベルドの口は裂けてしまうが、攻撃が止まる気配はない。

 それどころか、口の周りを血だらけにしながら狂気の笑みを浮かべている。

 

「『竜王の咆哮』」

 

 咆哮には二種類存在する。

 魔力による炎を噴き出す咆哮と、魔力なしの純粋な雄叫びによる咆哮。

 しかし魔力制御を身に付けたユーラシアは、新たな咆哮を身に付けることに成功していた。

 

 魔力は乗せるが、炎は発さない衝撃の咆哮。

 

「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ‼︎」

 

 雄叫びにただの魔力を乗せた咆哮により、バーベルドの放った攻撃のこと如くがあっという間に無に期してゆく。

 

「何だよこりゃ、夢か・・・・・? こんなことあり得ねぇだろ・・・・・俺が手も足も出ねぇなんて認められるわけが——————ゴプッ」

 更にギアを上げたユーラシアの拳が突如としてバーベルドの胸を貫き、大量の血を吐き出させる。

 更に一撃。もう一撃と、ユーラシアから放たれる拳は、バーベルドの回復速度が間に合わないほどの威力と速度でバーベルドを蝕んでいく。

 ユーラシアの拳は骨を砕き、肉を割く。

 神の力で補強されているバーベルドの肉体でさえ、ユーラシアが全力で放つ攻撃力には耐えられないのだ。

「ア——————カッ、アガ——————」

 気がつくとバーベルドの全身の骨は粉々に砕かれ、全身が穴ボコだらけとなっていた。

「一つだけ謝っておくよ。君をここまで傷つけたのは、君がボクの大切な人たちを傷つけようとしたって理由ともう一つ——————ただの八つ当たりだから」

 そう言うと、ユーラシアはバーベルドを魔力樹よりも高く蹴り上げる。

 

「『竜王の咆哮』」

 

 次は灼熱の炎を発する咆哮をバーベルドへと向けて放つ。

 しかし、ユーラシアは身に付けた魔力制御により、円柱状ではなく、バーベルドを包み込むように全ての炎を球体状に凝縮する。

 そうして次第に炎は勢いを弱めていき、丸焦げになったバーベルドは地の奥底へと落ちていくのだった。



「良かった・・・・・本当に良かったわ。貴方なら絶対に生きているって、信じていたもの」

 ユーラシアがミラエラたちの下へ降り立つなり、ミラエラが涙してユーラシアへと抱きつく。

「まだだよ、ミラ。まだ敵は残ってる」

 ユーラシアの瞳は、真っ直ぐにユキへと向けられていた。

「違うのよ。もう、戦いは終わったわ」

「どういうこと?」

「神は人類への侵攻を終了したってことだ」

「ええ。その話も含めて、貴方の話も色々と聞かせてちょうだい」

 こうしてユーラシアたちは都エリアのチャンドラ宅へと移動することにしたのだった。

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