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竜魔伝説  作者: 融合
暗黒大陸編
165/235

164話 魔力核育成開始

 暗黒大陸。

 時は遡り、ユーラシアが暗黒大陸へとやって来てから既に三日が経過した頃。

「ユーラシアの調子はどうだ? バラン」

「めちゃくちゃいい感じっすよ。流石は魔王様が認めただけのことはありますね」

 十大魔人 強欲のバランは、狼のような顔面にカンガルーのような脚を持ち、鞭のようなしなやかさを宿す尾をしている魔人。

 まず始めにユーラシアの育成係を任されたのがバラン。

 バランの下へやって来たアートの後ろには、ミッショルと、左右合わせて計十本の腕が生えているドラルドの姿があった。

 それぞれ人類により付けられた異名は、ミッショルが「冷酷」。ドラルドが「鉄壁」である。

「もしかしてお前、あの野郎を魔怪獣の群れん中に放り込んだのかよ?」

「アッタリ〜♪ もう実戦から慣れていけばいいと思ってさ」

「ふむ。つまり貴様は、俺の命令に背いたということか」

 アートは先ほどから表情一つ変えずに笑顔のままだが、その笑顔が徐々にバランへと恐怖心を植え付けていく。

 アートの考えでは、ユーラシアが魔孔に慣れ、ある程度魔力の調節が可能になって来た段階で魔怪獣との戦闘を開始させる予定であった。

 そして、ユーラシアの身を第一に優先する命を出したはず。それなのにバランの取った選択は、ユーラシアを死地へ追いやる行動。

 逆境は時として覚醒の糧となり得るが、確実に育成できる手段を捨てて、わざわざ命懸けの行動を取る必要などどこにもない。

 気がつけばバランの顔からは先ほどの笑みは消え失せ、瞳に動揺の色が現れ始める。

「ち、違うんすよ。別に魔王様の命令に背いたとかそう言うわけじゃ——————ア?」

 この場にいた三名の十大魔人が三名とも反応できないほどの速度で、バランの右腕が宙を舞う。

 切断面からは一滴の血も流れず、じわじわと痛みのみがバランを襲い始める。

「アガッ」

「私たちですら、一ミリも反応できないとは・・・・・素晴らしい限りです」

「お前たちも鍛え直しが必要だ。魔王の配下たる者、神人をも凌ぐ実力を身に付けて見せよ」


「「「は!」」」


 すると、先ほどから砂煙が立っていた遠方から突如大爆発が生じる。

 途端に視界全てが砂煙で包まる。

 しばらくして視界が晴れ始めた時、微かに人の息遣いがアートの耳へと届き始めた。

「———流石だな」

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ——————」

 今にも力尽きそうな表情を浮かべ、ふらふらになりながらも自分たちの下へ向かって来るユーラシアの姿に、ドラルドは思わず言葉を漏らす。

「まさか・・・・・本当にただの魔力だけで魔怪獣を倒したと言うのですか?」

 先ほどの爆発はユーラシアの炎によるものではなく、魔怪獣たちの体が幾つも破裂した時の現象であった。

 つまり、ユーラシアが放出した魔力を取り込み、魔怪獣たちの身体が木っ端微塵に破裂したことを意味する。

 その証拠に、頭上からは魔怪獣たちの肉片が幾つも降って来ている。

 三日三晩、食事を含んだ休息を一切取らずの魔怪獣との鬼畜戦闘。

 始めは魔孔を上手く扱えずに逃げ惑うしか選択肢がなかったユーラシアだが、竜族特有の思考領域を使用することで魔孔の扱いを瞬時に体得。その後、アートに言われた通り、魔孔による魔力の発散と吸収を繰り返し、魔力のみでこの三日間魔怪獣との戦闘で生き残って見せたのだ。

 魔大陸は、枯渇することのないほどの魔力で満たされているため、魔力切れを起こすことはないが、それでも魔孔を開いて三日でこの成長速度は、いくら十大魔人と言えど驚くのは無理のない話。

 ちなみに今現在のユーラシアの思考領域の時間の流れは、現実世界の約一万倍。つまり、現実世界での一年を領域内では余裕で一時間以内に過ごしていることになる。

 ユーラシアはアートの目の前で力尽き、意識を失う。

 そんな地に倒れたユーラシアをアートは助ける仕草を見せずにただただ見下ろす。

「結果的にはよくやったと言えるだろう」

 そう言うと、バランの右腕を瞬時に再生させる。

「・・・・・感謝します」

 バランは若干の身震いをしながらアートへと頭を下げる。

「今回の収穫はまぁまぁなものだ。バラン、お前の独断は一先ず許そう。だが次はないぞ」

「はい」

 アートは両腕を左右に大きく広げ、一人静かに何かを呟き始める。

「——————竜王の魔力を感じる。もっと・・・・・もっとだ。この地を竜王の魔力で埋め尽くそう」

「魔王様・・・・・? それは一体どういうことでしょう?」

 アートは振り返り、何やら企みを含んだ笑みを薄らと浮かべてドラルドに向ける。

「独り言だ。気にするな」

 その後、アートはユーラシアを連れて魔王城へと帰還するのだった。

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