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竜魔伝説  作者: 融合
暗黒大陸編
159/233

158話 世界の歴史

 この世界の全ては最高神と名のつく万物の頂点たる神が創造した。

 まず始めに創造したのは、生命が生きていく上で必要となる地水火風の環境。

 最高神が創造したその地には、他の世界には存在し得ない「魔力」と言う名の新たな力が根付くようになっていった。

 あらゆる場所に存在する微生物。それらが次第に土地を満たす魔力を吸収していくことで、その身を進化させていったのだ。

 けれど微生物たちには魔力を内に溜めておくための機能が存在していない。

 そのため、吸収はできてもそのほとんどが魔力に対応しきれず死滅する。

 どの世界に存在する生命も、環境に適応するため自らの組織構造を変革させる進化という現象を体験する。

 最高神が創造した魔力は、やがて生い茂る草木を育て、それにより空気を作っていった。

 微生物の内に秘められなかった魔力は、空気中へと還元され、還元されたその魔力は、何の変哲もない木々に吸収されていく。

 そうして次第に木々は微生物たちから吸収した魔力により多種多様に見た目を変えていき、死滅を免れた微生物は僅かながらに内に染み付いた魔力とともに進化・成長していく。

 こうして名もなき一つの生命が誕生し、その存在の内には、魔力に適応するための器官「魔力核」が宿るようになる。

 かつてその生命体の魔力を吸収してともに育っていった木々こそが、脈々と次世代に受け継がれていく「魔力樹」の祖となる始まり。

 そして始まりの生命こそが、後の竜となる存在である。

 進化を経験した生命体は水中に適応するために鱗や(ヒレ)、尾などを身に付け、次に空中へ進出するために左右に存在する鰭は巨大な翼へと進化していき、尾は長く、鱗は強靭でたくましい様へと進化していった。

 竜へ至るまでの進化を最も早く終えたのが、いつの時代か竜王ユグドラシルと称される存在だった。その存在は、最高神が創造した地上の魔力を最も多く吸収して育ち、最も大きな魔力樹を宿す存在。

 その後、ユグドラシルに続いて何体もの竜が誕生していき、竜族が地上を支配する時代が幕を開ける。

 それが今から何十億年も昔のこと。

 それから時は過ぎていき、その間に様々な生命体が誕生していく。

 

 約一万年前。

 最高神は、自然の摂理ではなく、感情や意思を持ち、豊富な知識を身に付け、自らの力のみで世界のあらゆるものを駆使し発展していくことが可能な生命を新たに創り出そうと考える。

 その理由は、億という長い年月を要して数々の生命体が誕生し、幾つもの環境が誕生と消滅を繰り返して来た。しかし、環境においては世界に存在する生命により変化させられて来たと言うよりは、天候や噴火などの自然の摂理により地形などに劇的な変化をもたらして来ただけ。

 そうではなく、異なる世界のように自らの手により時代の変化を見て取れるほどの変化を環境に与えて欲しいと考えたのだ。

 世界はそこに生きる生命たちのモノ。ただそこで生きているだけでは意味がない。あらゆるモノを駆使して環境の進化も同時に起こしていって欲しいのだ。

 そうして誕生したのが人類である。

 

 最古の竜族を先頭にあらゆる種族が人と生を謳歌する様は、創造主としてとても嬉しいことであった。

 しかし人類が誕生して間もなく、竜族はたった一人の女性のくだらぬ嫉妬心により滅びを迎えてしまうこととなる。

 最高神は悲しんだ。

 これまで世界の中心であった竜族が、そのほとんどが絶滅の時を迎えてしまったのだから。

 

 そこからは人間たちの手により、急速に環境は進化・発展していく。

 この世界には魔力が存在するため、発展速度には最高神さえ驚かされるほど。

 皆が皆、手を取り合い土地を創造し、暮らしを創造していく。

 

 約千年前。

 地上に暮らすあらゆる生命を支配しようと企む種族が現れる。

 それが魔族であり、魔族たちは魔王と呼ばれる悪劣非道な外道に酔心し、自分たちに従わない者全てを容赦なく惨殺していった。

 生きようとする人類。

 これまで最高神は静観に徹していたが、環境を豊かにする地上の魔力をより一層濃いものとし、人類の生きようとする意志に力を貸すようになっていく。

 おかげで人類は、最高神による様々な恵みの魔法を魔力樹から授かることとなる。

 後に最高神による最大の恩恵である勇者と呼ばれる救世主が魔王を倒し、人魔戦争を終結へと導いたことで、対人魔暦は幕を閉じることとなった。

 人々は争いから解放され、再度世界の進化と発展のためにその生きる意思が生まれてくれることだろう。

 最高神はそう願っていた。

 しかし、そうはならなかった。

 魔族は、己の欲のため、欲しいものを手に入れるために暴力を人類へと振り翳した。そのことを経験してしまったからこそ、人類は各々が欲しいモノのために争いを始めるようになる。

 まず始めに起こったのは、近隣同士の殺し合い。国と国との奪い合いだ。

 より強い方が弱者を喰らい、新たな進化・発展の形を見せていく。

 そうしていつしか人類は四つの領土に分かれるようになっていく。

 それが東西南北の四つの領域。

 戦争は激化の一途を辿っていき、東西南北による大規模戦争は、約二百年の長い年月と、数えきれぬほどの多くの死者を出した。

 この人類間の戦争は、全て解放暦と呼ばれる時代に起きた出来事である。

 

 最高神は激怒した——————対人魔暦では、生きたいがために抗っていた人間たちが、自分たちの敵がいなくなった途端、次は私欲のために人間同士の争いを始めたことに。

 自ら命を無下にする行為など愚かでしかない。

 そんなにも滅びたいのなら、神が人類を滅ぼしてやろうと決意する。

 こうして世界は神放暦へと突入したのだ。

 神攻は止まることはない。

 もしも止めてしまったら、再度人間同士の争いが始まってしまう。

 争いは環境に不利益しか生まない。

 自らの創造物が愚かな感情を露わにして血を流す姿。

 残された者たちの絶望と悲しみ。

 これ以上見たくはない。

 仲間同士の争いほど悲しいものはない。

 そのことを最高神はよく知っている。

 竜族により痛いほど思い知らされた。

 どの道消えゆく運命だとしても、人類にそんな悲しい思いはせめてこれ以上して欲しくはない。

 これは、最高神の唯一の人類に対する思いやり。

 神による圧倒的な力により、なるべく苦しむことなく人類を滅ぼしてあげるのだ。

 そして、自らで進化・発展していくことが可能な、争いなど生まない新たな種族を創造しようと決めた。

 そんな生命を創造できるかは分からないが、偶然にも誕生した「エルフ」は、最高神の理想に最も近い種族だと言えるだろう。しかし、結局神との争いに手を貸してしまうのなら、それは争いがない種族とは言い難い。

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