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竜魔伝説  作者: 融合
暗黒大陸編
156/234

155話 エーテルアイス

 次なる出番は、ドラゴニュートとロッド。

 ドラゴニュートは結界内に足を踏み入れると、凍えるほどの寒さを諸共せずに地上から一斉にユキへ向かって炎の咆哮を放つ。

 ロッドは天高く舞い上がると、真っ赤なバズーカ二号を天へと掲げる。

「スマッシュインパクト 改‼︎」

 そして放たれたのは、ドロっとした見た目の赤黒い何か。

 それはコウィジン特性の人工マグマであり、ロッドの魔法『増強・増大』、『方向増強』の効果により、怪物を埋め尽くすほどの溶岩が計六つの竜巻へと拳の形をして振り下ろされる。

 

 ミラエラの『氷界創造』により冷え切った結界内の空気は、勇者の狙い通りにドラゴニュートとロッドの攻撃により大爆発を発生させる。

 地上から天へと伸びる巨大な竜巻は一瞬にして弾け飛んだ。

 直後、一瞬にしてエネルギー運動が停止し、竜巻は砂のような氷の結晶として地上へと降り注ぐ。

 

 勇者が施した結界は、勇者が即興で作り上げた『粒子運動停止結界』。この結界の魔法陣を描く際、爆発により予測された一定以上の熱エネルギーと運動エネルギーを持った粒子の運動を停止させる効果が付与されていた。

 更に、ユキ本体がいる龍の顔にも同様の結界が施されていた。

 巨大な結界は内側に魔法の効果を、ユキを覆う結界は、外側に魔法の効果が付与されていたのだ。

 

 そして勇者は片手に白い球体を手にしてユキへと突っ込んで行く。

 

「「ユキ——————」」

 

 勇者が手にする白い球体の正体は、メモリーフレア。

 所有者の好きな記憶を閉じ込めておくことができる魔導具。

 勇者がメモリーフレアに込めた記憶は、三人で家族として過ごした幸せな日々の記憶。

 球体が割れ、ユキと勇者を覆う龍の顔は真っ白く包まれる。

 数秒後、龍の顔が歪な動きを見せ始め、徐々に胴体が生じる。

 そして龍の顔はより一層凄みを増し、存分に怒りを含ませた修羅の表情へと様変わりした。

 道と水エリアの地上には、あっという間に荒れ狂う海が存在し、先ほどよりもその大きさと数を増した竜巻が複雑なくねりを持って生じ始める。

 更に、先ほどの聖水の怪物からの攻撃は、三百六十度飛散する鋭い水弾のみであったが、今度はその攻撃に加え、竜巻が縦横無尽に動き回り吹き荒れる強風に翻弄される。

 樹も山もほぼ全てが聖水一つに呑み込まれてしまった。

 頼みの勇者はユキの下へ。

 ミラエラも気絶してしまっているため、聖水による攻撃からエルフやドラゴニュートたちを守ってくれる者は一人もいない。

 そう思われたが、ロッドの新たな右腕から生じるマグマがカーテンのように垂れ下がり、飛んでくる聖水全てを触れた途端に蒸発させている。

 ロッドは唯一無事であった水面よりも高い岩場を足場とし、自身の背後にいるチャンドラ含めた百名以上のエルフたちにドラゴニュート、ミラエラを庇っているが、水面の上昇と右腕からドロドロと流れ出るマグマにより、足場となる岩場が徐々に溶け始めてしまっている。

「チクショー。勇者様は何してやがる? このままじゃ俺たちみんなジ・エンドだ」

「——————勇者は今、ユキの心と向き合ってるのよ」

 すると、意識を失っていたミラエラが満身創痍ながらも目を覚ます。

「おそらくだけど、先ほどのユキの姿は、私たちに対する怒りの感情を露わにした姿。そして今の状況は、拒絶の意思が具現化したものなのだと私は思うわ」

 そう言いながら、ミラエラはロッドの前へと出る。

「おい!」

 慌てて自身の前へ出たミラエラを引き戻そうとするが、ミラエラが踏み締める水面と、飛んでくる水弾のこと如くがミラエラへと届く前に凍結する現象が起きている。

「さっきよりも空気が冷てぇ・・・・・」


「勇者の心を受け止めると言うことは、これまでの自分自身の否定・・・・・そう簡単にできることじゃないわよね。けれど、それすらも認めなければならないのよ、ユキ」

 勇者が求めているのは、以前のユキであり、今のユキではない。ユキが勇者や人類の味方となるためには、今の自分を否定されている現実を受け入れた上で、これからの人生を共に歩む覚悟を持つ必要がある。

 そしてそれは、ミラエラと出会う前のユキならばできたことだろう。

 しかし、心優しきユキはミラエラに否定され、命を奪う行為に心が壊されないよう変革させた今のユキは、勇者により否定される。

「貴方の怒り・・・・・その全てを受け止めてあげるわ」

 聖水の勢いは更に増していき、まるで竜巻が意思を持っているかのようにその全ての矛先がミラエラへと向けられ、その猛威が振るわれる。

 刹那の一瞬、ミラエラの纏う魔力のオーラはその温度が更に低くなる。

 靡く白髪はその一本一本が鋭く凍結し、体全体が氷のように透け始める。

 



「『エーテルアイス』」

 



 ミラエラが迫り来る幾つもの竜巻へと片手を差し出すと、その手のひらに微かに触れた竜巻は接触部分から瞬間的に氷結が広がっていき、地上を満たす聖水に宙を舞う水弾全てをあっという間に凍らせてしまった。

 しかし、背後に控える者たちに一切の被害はない。また、宙に浮かぶユキと勇者にもミラエラの魔法の影響は行き渡ってはいない。

「追い込んでみるものね。己の殻を破ることができたのは、何百年ぶりだわ」

 『エーテルアイス』とは、自分自身を物質体と霊体の中間の構造へと無理矢理作り変えることで、触れるモノ全てを絶対零度以下で凍結することのできるミラエラの新たな魔法。

 神人アクエリアスの全力を一瞬にして無に帰せるこの魔法は、当然そう長くは続かない。

 しかし、持続している間は氷結した先端から生じる聖水を生じた瞬間氷結している。

「任せたわよ。マサムネ———ヒナタ」

 

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