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竜魔伝説  作者: 融合
勇者再生編
133/234

132話 勇者再生物語 其ノ一

 僕、新庄 政宗

 

 と

 

 私、石上 日向

 

 は

 

 魔王を倒した「勇者」である。

 

 

 神による侵攻は、僕たちが「過去」へと戻る以前と変わらず、魔導祭五日目の日に開始された。

 次々と花へ姿を変えていく人々。

 それは、神人ウェルポネス。神名「フローラ」による神花の能力。

 正直神花の能力は一度見ているが、直感的に以前見た開花とは何か異なる違和感を感じた。

 そして僕たちは即座に神花の解除魔法の魔法陣の作成に取り掛かったけど、『真実の魔眼』を持ってしても追いつかないほどの速度で神花は開花していく。

 更に、もう一人の神人により開花した人々は体内へと吸い込まれてしまった。

 あっという間に戦場には、絶望の色が濃く現れる。

 また失ってしまった——————ダビュールに必ず守ると約束したのに、守れなかった。

 いや、違う。絶望が加速する現状、浸り嘆くことなどあってはならない。

 生きている人たちは何がなんでも全力で守り抜かねばならない。

 そして新たな魔法陣を作っている場合じゃないと判断した僕たちが、助けに入ろうとした時だった。

 漆黒の球体から一人の少女が現れる。

 その少女は、かつて僕たちがこの世界へと転生する前にいた別の世界で、義理の家族として共に過ごした可愛い妹のような、娘のような存在——————柊 雪と瓜二つだったのだ。

 

 雪は死んだはずじゃ・・・・・

 

 いや、この話はいずれまた語るとして、僕たちは雪の姿に目を奪われ動けなくなってしまった。

 そしてこの場には魔王の転生体もいる。

 いくら僕たちと言えどもパニック状態。

 僕たちは神人が今日、魔導祭が開かれるこの場に姿を見せることを分かりながらも、彼女たちを待ち構えていたのだ。

 

 全ては、まるで殺しを愉しむかのようにクリメシア王国王都クリメシアの全てを僕たちから奪った神人フローラを倒すため。

 それなのに魔王に僕たちの正体を気付かれてしまったら、おそらく彼は神人ではなく、僕たちへと牙を向けるはず。

 だから僕たちは、コロシアムの倉庫のような場所で保管されていた仮面を身に付け、皆の前へと姿を見せた。

 元々着ている服へと魔力、神の力の両方の気配を遮断する特殊な効果を付与した魔法陣を施していたため、姿さえ偽れば勇者であることを誰も気が付かないだろう。

 だけど、ホントにやらかしちゃった。

 勢いよく飛び出たはいいものの、僕たちの手に握られていたのは、人魔戦争中でも使用していた勇者の聖剣。

 その存在は知っていたとしても、実際に見たことのある人なんてほとんどいない。

 だけどここには、魔王もいるし、それにミラエラもいる。

 ミラエラとは、人魔戦争中に旅仲間だったこともあり、親友。

 そして、彼女も僕たちと同じく、異世界からこの世界へと転生して来たらしく、竜が生きていた時代から生きているのだと。

 本当に人間?

 更に驚きだったのは、彼女も地球という星の日本という国で過ごしていたという事実。

 いやぁ〜本当に親近感が湧いて仕方なかったよ。

 でも僕には日向がいるから好きになることはなかったけど。

 そしてここで不思議に思うのが、名前だよね。

 同じく日本から転生して来たのに、僕たちはかつての名前を今も名乗ってるのに対して、ミラエラは、この世界からの名前を名乗ってる。

 まぁ、普通は転生したらその世界の名前を名乗るよね。

 だけど、僕たちには親がいないんだ。

 正確には、最高神が僕たちの親。

 当然僕たちは前の世界で死んでからこっちの世界にやって来ているわけだから、最高神の下で赤子として過ごした時期もあった。だけど、まるで時間が超速に早送りされてるみたく、あっという間に勇者としての体と力は育っていった。

 だから『原 天×点 界』で神人の姿を見る暇もなかった。

 けど、最高神の姿はしっかりと記憶に刻み込まれてるんだけどね。

 そして勇者って名前しか貰えないまま、地上へと送り出されたってわけ。

 

 そろそろ話を戻そうか。

 てなわけで聖剣を見せちゃったのは大失敗。

 魔王は案の定僕たちに攻撃を仕掛けて来たし、状況はより最悪に。

 けれど、なんとか言いくるめることに成功して、目標の神人フローラを退治することができた。

 これでクリメシア王国の滅びの運命は、一先ず変えられたことになる。

 

 けれど、僕たちの中には、言い表し用のないくらいモヤモヤとした心を抉る辛い感情がひしめいていた。

 

 雪は僕たちの家族・・・・・だけど、戦わなければ人類は滅ぼされてしまう。

 

 永遠に答えの出ない葛藤に苛まれ続ける。

 

 僕たちの理想を体現するための空間が滅びる直前、最も強く僕たちの心に抱かれていた感情は、雪の安全を願う自己中な思いだった。

 

 

 僕——————余は、ダビュール・サラン・クリメシア。クリメシア王国の王にして、かつて勇者だった存在。

 

 それでは語るとしよう。

 

 『勇者再生物語』を。

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