114話 間もなく
そうして迎える魔導祭二日目以降。
二日目以降は魔導列車の運行はなく、クリメシアの森林地帯に記された転移魔法陣での移動となる。
二日目から三日間行われるのは、バトルロイヤル。
二日目で約三百名いる生徒が百名程度に絞られ、勝ち残った生徒は、三日目には六十名以下まで絞られる。
そして四日目には更に半分の三十名以下に絞られる仕組みだ。
バトルロイヤルの舞台となるのは、地のレース用とは別で作られたバトルロイヤル用の異次元キューブ。
そこには、クリメシアの街並みそっくりの複製舞台が設けられており、魔導祭の時に使用される訓練場にあったバブルの原理が応用されているため、キューブ内で使用される魔法や武器は全て幻想形態となる。しかし、バブルシャワーのような魔力回復システムは組み込まれてはいないため、実践を意識した種目となっている。
勝敗条件は、ダンジョン試験でも使用された緑色のクリスタルを破壊すること。当然破壊されれば敗北扱いとなり、参加者が規定人数へと減っていくまでキューブの出口は解除されない。
そうして行われたバトルロイヤル。
魔導祭四日目が終わった時点で、上位二十八名に見事ユーラシアは入ることができた。
というよりも、ユーラシアの実力ならば、最早生徒の中で相手になれる学生はいないだろう。例えそれが『エルフの都』の遠征組であったとしても。
そして明日の五日目からはトーナメント形式へと移行し、スコーヴィジョンの映像はそのままに、観客が直接見ることのできる武舞台がコロシアムの中央に設置される。
五日目に十四名へと絞られ、六日目には更に半分の七名へと絞られる。ラスト七日目は、七名の生徒たちにくじを引かせて対戦相手を決定する。その際余った一人は、準決勝を省き決勝進出となる。そのため決勝は、四つ巴戦となる。
最後まで舞台に立っていた一人が優勝となる。
ここから更に盛り上がりは増していく。
しかし、事情を知っている者たちには少しずつ焦りの表情が見え始めていた。
魔導祭五日目にも神が動く気配はない。
一体いつ仕掛けて来るのか?
そもそも、本当に魔導祭に仕掛けて来るのだろうか?
あくまでも人類側がそう判断しただけであり、そうであると宣言されたわけではない。
疑心暗鬼は恐怖をより一層濃いものとする。
そして恐怖は死を呼び、絶望を呼ぶ。
だからこそゴッドスレイヤーたちは決して恐怖で心が揺らぐことのないよう、常に全力で警戒にあたっている。
少女はただひたすらに時が来るのをじっと待つ。
最早自分の正体がバレていることなど百も承知。
しかし、時が来れば人類に勝ち目などなくなる。
そして少女の耳には、聞こえるはずのない人間の心が裂ける音が聞こえていた。
間もなく、十年前は失敗に終わった神攻の時が訪れる。