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竜魔伝説  作者: 融合
神攻編
112/233

111話 地のレース

 俺の名はカオス・ブリューハット。

 登場するのは二回目か?よろしくな。

 てな感じで呑気に話していたいところなんだが、これまた大変なことが起こっちまってんのよ。

 通常『魔導レース』は地→水→天の順番で行われていくんだが、地のレースが始まってもう二時間近くが経過してる。

 そりゃあまぁ、地のレースは他の二つに比べて長い時間を要する種目ではあるけどよ。ここまで長いのは初めてだ。

 天や水のレースは、予めパートナーとなっている魔法生物を使用しての競技だが、レプラコーンとは本番が初の対面だ。おまけに幻とは言え、色んな物に姿を変えてきやがるわけだから時間がかかるはずだよな。

 


 (レプラコーンは、カメレオンのようにさまざまな環境に溶け込むことができる上、3D映像のように自身を別の物へと立体的に見せることができる(大きさも力も変化ないため、例え巨大で獰猛な魔物に変身したところで、見ている大きさと実際のレプラコーンの大きさ、力には乖離が生じている。あくまでも幻)。レプラコーンは魔導祭のことは何も聞かされておらず、今ではキューブが自分たちの家だと思い込んでいるため、競技者は侵入者ということになる。そんな中、生徒たちはレプラコーンの信頼を勝ち取らなければならない)

 


 だけど、今年のレプラコーンは、一体たりとも妖精としての能力を使っちゃいねぇのさ。それなのに過去一長い。

 理由は分かんないが、俺たちを見るや否やキューブの端の方に集まって団子状態になっちまってる訳よ。

 一体何に怯えてやがんのか知らないが、これじゃ競技にならねぇってもんだ。

 その証拠に、参加者八十名の内ゴールした奴はまだゼロ。

 な?やべーだろ。

 ていうかもう天のレースは始まっちまってるんじゃないか?

 だけど、規定通りに行けば、レースは同時に二つ以上行われることはない。

 だけど流石に二時間は長すぎんだろぉ・・・・・水のレースはぶっちゃけどうでもいいが、今年の天のレースを見逃したとあっちゃ、恨むぜほんと。

 今年はなんたって、低学年、それも一年から初めての魔導祭出場者が天のレースに出場するんだからな、おまけにそいつは世界樹の宿主と噂されてる。

 これを見ずに、一体何を見るってんだ?

 俺はデータベースと呼ばれる男だぜ?西側領土の情報なんざ、三日以内にはゲッツできるってんだ。

 その情報をゲッツしてからもうそろ二ヶ月だ。こっちの領土でも徐々にユーラシアの噂は広がりつつある。現に、観客の中にはその噂を話している奴もいた。学園でも一週間前あたりから世界樹って単語を聞くようになった。

 

 いい加減我慢の限界よ、さっさと終わらせるとしますかな。

 

 俺は必死になってレプラコーンの説得を試みる同志たちに憐れむ視線を向けながら、しばらく・・・・・いや、長いこと観察していた。

 だけど我慢の限界だ。

 そう思い、俺は重たい腰を上げてレプラコーンの下へと歩み寄っていく。

 どうしてまともに参加せず観察なんかをしてたかって?

 自慢じゃないが、戦闘力は老人並み、足の速さも五十メートル十秒程度だろう。

 魔戦科生徒の恥とは言われ慣れたもんだが、人には色んな強みがあっていいだろ?

 俺は情報という武器を用いて戦うスタンスなのさ。

 俺は将来、情報収集専門のゴッドスレイヤーを目指しているんだ。

 いつの時代も情報は使い方によっちゃあ、何にも変え難い最大の武器になり得るって知ってるか?

 だから俺はこと魔導レースにおいても他の生徒たちがどんな風にレプラコーンを説得するのかを観察していたわけだ。おまけに今年のレプラコーンはやけに手強いときた。これは観察しない手はない。他の二つじゃ競技中に情報収集してる暇なんてないだろうが、地はちがうからな。情報ってのはすぐには役に立たずとも、いつか必ず役に立つ時が来る。

 

 俺は群れのリーダーだと思われるレプラコーンのすぐそばまで歩み寄り、普段は絶対見せない朗らかな笑みを浮かべた後、ゆっくりと顔を近づけて甘い言葉を囁く。

 そして俺は直後、この場にいる全員の視線を釘付けにすることになる。

 俺は甘い言葉を一体のレプラコーンへと囁いた後、自ら実態化したレプラコーンの唇へと熱いベーゼを交わす。

 おそらく、スコーヴィジョンを通して見ているほとんどの奴が驚いてんだろうなぁ。

 言わせてもらうが、誰が好き好んで可愛くもねぇレプラコーンとキスすんだよ。これはあくまでも少しでも早くこのレースを締めるために仕方なくやってることだ!

 俺の魔法は無属性の『洗脳魔法』に付随する魔法だが、精神干渉系の魔法の使用は禁じられてるからな。だけど言葉にはちょいと自信があるのさ。なんたって、洗脳魔法の中には、言葉に魔力を乗せて放つ魔法もあるんだからな。

 俺は魔法を使わずともそれなりに口が上手いのよ。

 思い返してもみろ。

 ダンジョン試験の七日目の夕方あたりに生き残った奴らが集まって今後の方針的なことを話し合った時のこと。

 あの時は俺もカチンと来て思わず言い返しちまったけどよ、その俺の言葉でミショス先輩が腹を立ててたみたいじゃねぇの。あの時の俺はそのことに気づかず色々と話を進めて行ったわけだが、いつの間にか先輩が俺のことを認めてたこと覚えてるか?。

 意識せずとも溢れ出てしまうカリスマ性・・・・・それが俺の長所よ。

 何で洗脳魔法なのかって?んなこと知るかっての。あれじゃねぇか・・・・・可愛いネェちゃんを洗脳して、デカいおっぱ—————って、何言わせようとしてんだ馬鹿やろぉ!

 

 ともかく、俺には競技に勝つ気なんざなかったんだが、仕方ねぇな。

 接吻を終えたレプラコーンは、俺の手を取り、俺は優しく引き寄せる。それと同時に、その他のレプラコーンたちもゾロゾロと俺の後に続く、どこぞの笛吹きを彷彿とさせる光景が出来上がる。

 こうして、俺はキューブにいた全てのレプラコーンを連れ、ゴールした。

 贈られる拍手。

 まぁ悪い気はしないが、俺としては天のレースが始まっていないことへの安堵感を最も大きく感じていた。


「さて、どうしたもんか」


 俺は自身の左腕に、まるで恋人かとツッコミたくなるようにベッタリとくっつくレプラコーンを冷たい視線で見下ろす。

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