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竜魔伝説  作者: 融合
神攻編
105/233

104話 マリックとユーラシア

 それから約一週間が経った九月十五日。

 ユーラシアはある人物の訓練に付き合わされていた。

「君、ほんと異常ね。魔力なしの体術勝負だとしても、ここまで僕と張り合えるとは正直思ってなかたよ」

「オルカー先輩こそ流石です。ボクは攻撃をまだ一度も当てられてない」

 居残り部屋にて、魔戦科六年Sクラスであるマリック・オルカーとユーラシアの二人きりの手合わせ。

 手合わせにおいて手加減など無用だが、手の内全てを見せる必要はないため、予め魔力なしの純粋な素手のみをルールとして行っている。

「当然ね。僕はオルカー家期待の存在よ。だけど、君は世界樹とか関係なしに、その強さは一体何か?正直度肝抜かれたよ。一年生とは思えない強さね。まったく、出来の悪い妹とは大違い」

 マリックの口から妹という単語が聞こえたため、ユーラシアはずっと疑問に思っていたことを聞いてみることにする。

「そういえば、一つ聞きたいことがあるんですけどいいですか?」

「いいよ」

「オル・・・ミューラさんとは、ご兄妹なんですか?」

 マリックはほんの少し眉を顰める。

「そう。だけど、僕とミューラに血の繋がりはないね」

「ということは、オルカー先輩は義理の兄ってことですよね?」

「そゆことになるね。だけど、拾い子はミューラの方。三歳の頃、オルカー家に拾われた得体の知れない人間ね」

 ユーラシアは、例え義理でも妹であるミューラのことを、あまり良くない言い方をするマリックへと多少の怒りを覚える。

「得体の知れないって・・・・・義理だと言っても妹なんですよね?」

「そうよ。だけど、いくら巨大な魔力を宿してるて言っても、それを扱いきれないなら何の意味もないね。何処ぞの馬の骨かも分からない上、そいつが誇りあるオルカー家の面汚しともなれば冷たくもなるよ」

「いや、確かにオルカーさんは自分でも落ちこぼれだってことは認めていましたけど、そんな言い方しなくても・・・・・それに、夏休み中は、アートくんに魔力制御の方法を教わっていたみたいですし、オルカーさんなりの努力を少しは認めてあげてください」

 マリックの表情は、ほとんど無表情のままだが、明らかにユーラシアに向けられる視線が鋭くなったのを感じた。

「君は何か、僕に説教する気ね?それに、アートって誰よ、魔力制御なんて基礎の基礎ね。完璧にはこなせなくとも、ある程度は身に付けとくのが普通よ。それを全くできないなんて、論外ね」

 ユーラシアは、ミューラの現状を考えるからこそ、余計マリックに腹を立てる。

「言わせてもらいますけど——————」

「減らず口、まだ続けるか」

「はい!世界樹の魔力は、今はある人のおかげで制御できていますけど、だけど、大きな魔力を制御するのがどれだけ大変なことか、先輩には分からないんですか?もしも魔力が制御できるようになった未来を想像して、妹を応援してあげることはできないんですか?それに・・・・・今、オルカーさん、ミューラさんが行方不明なことは知ってますよね?」

「当然よ。校長先生が六武神だってことと同じくらい、今や学園の噂になてるからね。だけど、それがどしたか?むしろ家名の面汚しが消えてくれてスッキリしたよ」

 その発言を聞き、ユーラシアは完璧に堪忍袋の緒が切れる。

「取り消してください」

「何をよ」

「今の発言をです。妹が行方不明なのに、スッキリしただと・・・・・ふざけるなよ」

「生意気は今ならまだ許してあげるね。けど、それ以上続けるなら、少し痛い目見てもらうかな」

「それはこっちのセリフです」

 そう言い終えるや否や直後に瞬きほどの沈黙を挟んで、両者が一瞬にして距離を詰める。

 そうして握り込まれた両者の拳。

 一方は灰色の髪を逆立たせて青く変色させ、拳へと青く輝くオーラを纏う。

 もう一方は、腕から拳にかけて大量の血管が浮き出るほど力強く握り込まれている。

 拳が交わろうとした直前、突如両者の目の前へと金髪を靡かせたエルナスが現れる。

 

「「ッ⁉︎」」

 

 マリックの振るわれた拳は既に止めることができず、エルナスへと放たれてしまうが、エルナスは自身とマリックの間へと、魔法人形を出現させる。

 途端に魔法人形は勢いよく爆発した。

 しかし、ユーラシアは『竜眼』によりエルナスの姿を捉えた瞬間、即座に拳の軌道を変更し、片方の手のひらで拳をがっしり受け止める。

 拳を受け止めた衝撃派により居残り部屋の床は「ボコリッ」と大きな半球を描きながら下へと沈み、魔法人形の爆破の衝撃がエルナスへと届く前に爆風により人形を遠方まで吹き飛ばした。

「ハァハァハァハァハァ」

「一歩間違えたら死んでたよ?」

「ボクたちはお互い、攻撃を当てるつもりなんてありませんでした。ただ、威嚇しようと思っただけで・・・・・」

「気づいてたか。全く、生意気な後輩ね。決着は魔導祭でつける。僕と当たるまで負けないよう、せめて頑張ることね」

 マリックはそう言い残すと、何もなかったかのようにあっさりと居残り部屋から姿を消した。

「当てるつもりはなかったとは言っても、お前の力は、その余波だけで致命傷になり得るレベルだ。己の力を何のために振るうのか、振るわなければならないのか、よく考えておけ」

 エルナスは険しい表情でユーラシアへと教師らしき言葉を贈る。

「だが、ミューラのことで怒ってくれたことに関しては礼を言っておく」

「いつから、ボクたちの話を聞いてたんですか?」

「ほとんど最初からだな。あいつがミューラの義理の兄だと言うことは知っていたし、お前もそのことに気がつくことは予想がついていた。それに、お前は後先考えずに行動する癖があるだろう?だからもしやと思い見に来たわけだが、案の定だったな」

「前にシェティーネさんにも、おんなじようなことを言われました・・・・・」

 ユーラシアは、その時のことを思い出しながら反省する姿勢を見せる。

「今回は魔導祭の訓練ということで見逃すが、適切でない場で今日のような揉め事を起こせば、ユーラシアだとしても処罰させてもらうからな。きちんと覚えておけよ」

「はい」

 ユーラシアはしっかりと首を縦に振る。

 その後、受付にいるメモリアへと部屋の修理をお願いするため、ユーラシアはエルナスと共に再度頭を下げるのだった。

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