眩しい世界へ・・・
PM7:00
─club JEWEL─OPEN
まだ開店前だと言うのに、外には数人のお客様がお店が開くのを待っていたみたい。
─いらっしゃいませ~♪
━いらっしゃいませ~
=いらっしゃいませ♪
入口に並んでお客様のお出迎えをした。
あれよあれよと言う間に話が進み、今私は新しい世界に来ている。
ほんの数か月前まで、毎日職場と家の往復ばかりで、
はっちゃけた遊びもした事がなかった私が…
こんな煌びやかな空間で結婚式でもないのに、ドレスを着て…
もちろん男性経験が豊富な方でもないので、
お出迎えのお客様の顔を直視できず、お客様の靴ばかりに目が行ってた。
一通りお客様がお店に入り終えると、女の子たちは待機席と言う席に座らされる。
「男性スタッフ①─かなさんとゆずさんお願いしますー」
「男性スタッフ②─まゆさんお願いしますー」
黒いスーツと言うよりも、バーテンダーの様な衣装を来た男性スタッフが声をかけた。
呼ばれた女の子たちは『はぁい』と、一言だけ返し、小さなハンカチと小さなポーチを手に、
声をかけた男性に着いていった。
店内はノリの良いBGMがかかっており、あちこちで笑い声や甘い声が響いて賑やかになってきた。
と、そんな感じでウロチョロと辺りを見回しては、
目を丸くしたり、輝かせたりしている挙動不審な私に気づいたのか、
横から(くふふっ…)と、押し殺した笑い声が聞こえて、ハッッと横に目を向ける。
ゆうき…いや、今は”あかね”がハンカチで口元を抑えて肩を上下に振るわせていた。
目は三日月になってちょっと涙目になってる。
「─ゆ、、あかねさん…?」
「──すみれ笑わせないでよwwww」
「─??」
わたしが何をしたって言うのだろう…。
訳が分からず???マークを頭の上に散らばしながら首をかしげる。
「─私なにかした??」
「──キョロキョロと…きょどりすぎだってwwww」
「─…!え、そんなに分かりやすくきょどってたかなぁ…」
「──多分みんな気づいてるwwなんならお客様も気づいてるかもよwwww」
「─えええええ!?やばいやつじゃん私…」
私の心臓がバクバクしていたのに気づいていたのか、
あかねと談笑したところで少しだけ落ち着いてきた。
「男性スタッフ①─あかねさんお願いしますー。」
「──はぁい。・・・あれ?初回すみれちゃんと着いてって店長に言われてたんだけど、
わたし一人でいいの?」
「男性スタッフ①─え!すみません、店長に確認してくるので、少しお待ちください!!」
「──はぁ~い」
そう。
初回は私一人でお客様のもとへ行っても何をしていいのか分からないと思うので、
あかねと一緒に着いて、お仕事を教えてもらうと言うのを聞かされていた。
喫茶店などの接客とは違い、主に男性のお客様をもてなすのに、
男性の店長が一緒の席に座ってアレコレ仕事を教えるのは違うみたい。
「男性スタッフ①─お待たせしました!あかねさんとすみれさんお願いします。」
「──はぁい」
「──(ほら、すみれも行くよっ)」
こそっとあかねが耳打ちしてくる。
きたっ!!!!
一旦は落ち着いた心臓も再びバクバクしはじめてきた。
見よう見まねで、持ってたハンカチとスマホしか入っていないポーチを手にして、
男性スタッフとあかねの後を着いていく。
案内される間も目の動きは止まらず、あちこちのテーブルに目が行ってた。
「男性スタッフ①─お待たせいたしました~。あかねさんとすみれさんです~!」ぺこり。
わたしたちの紹介と一礼だけして去っていった…。
(ほんとに案内だけする係なんだ。。私ももしかしてそっち側の方が良かったのでは…?)
「──はじめまして、あかねです~♪お隣いきますね~♪」
「お客様A─おお~♪おいでおいで~♪」
「──すみれちゃんは、そちらのお客様の間に入れていただいて~♪」
「─ぁ…はい。」
「─あ、、あいだ、、入ってもよろしいでしょうか?」カチコチ
「お客様B─いいよいいよ~♪そんなに緊張しないで~どうぞ~♪」
「お客様C─どぞ。」
わたしが席に座るまでの間に、あかねは以前からの知り合いと話してるかのように、
すっかりAさんと打ち解けて話が弾んでいた。
「──すみれちゃんは今日から入ったばっかりの新人さんだから優しくしてくださいね~♪」
「A─お~♪新人さんだったのかー!いいね~♪」
「──むぅ~。」
あかねがぷぅっと頬を膨らます。
「A─あかねちゃん妬いちゃったの~?ん~可愛い!!」
「──そうなの~!私はかわいいの~!よそ見しちゃいやーッ」
「A─ん~可愛い♪ヨシヨシ♪」
え、何この光景?
あかねとAさんは昔からの知り合いか?はたまたカップルだったのか?
「B─すみれちゃん今日からなんだね~緊張してる?」
急に声をかけられビクッ!っとなってしまう。
「─あ、はい!ちょっと…緊張してます…」
「B─あはは。すみれちゃんは正直なんだね♪少しづつ慣れていくといいね♪」
「─ありがとうございます!」
初めてのお客様が親切な人で良かった…。
ドキドキが少し落ち着いてきた。
あかねの動きをチラチラと見ながら動きをチェックしていた。
まずは…ハンカチでお客様のグラスを拭く。
お酒が少なくなったら注ぐ。
タバコを持ったら火をつける。
え、こんだけ?
これだったら出来そう!
BさんとCさんのお酒をチェック!
あんまり減ってない!
タバコの火!・・・タバコ吸ってなさそう?
グラスの拭くタイミング!
分からぬ!
とりあえず拭いとくか。
「B─あはは♪すみれちゃんお酒の作り方とかは教えてもらったのー?」
「─あ、いえ!あかりちゃんの動きを見たり…
後はお客様は色んなお酒を飲んだり、割り物も違うからって教わっています。」
「B─お~♪なんとなくは教わったんだね♪」
「─はい!」
「B─お酒を作ったりするのも、大事なのかもしれないけど、一番大事なのは・・・」
「─なのは・・・?」
「B─楽しむ事だよ♪僕らと一緒に楽しい時間を過ごす事♪」
「─!!」
たしかに。
お酒を飲むだけが目的だったら、居酒屋でも立ち飲み屋でも良いのだ。
キャバクラに来るにはここに来る目的がある。
「─はいっ♪いっぱい楽しめてもらえるように頑張ります!!」
「B─あははははっwww」
「B─ほんとに正直だなーw頑張るんじゃなくて、一緒に楽しむんだよ♪」
あ、なんか泣きそう。
ずっと緊張ばっかりしてたせいか、肩の力がふっと抜けていく。
「─はい♪一緒に楽しみましょうね♪」
「B─すみれちゃんは他で何か仕事とかしてるの~?」
ここからはBさんがリードしてくれて、会話がはずみ楽しい時間を過ごせた。
と、思っていたんだけど…。
一緒に来ているCさんがあんまり楽しくなさそう。
「─あ、、あの、お酒作ってもよろしいですか…?」
「C─どぞ。」
「─お酒は多めと少なめどっちが良いですか?」
「C─あ~適当でいいよ。」
ずっとこんな感じで、逆に話しかけるのが迷惑そうにも見える。
あかねとAさんが席を立った。
??
まさか二人で抜けてこっそりあんな事やこんな事…
と、思いきや、Aさんはお手洗いへ。あかねはおしぼりを持ってトイレ前へ。
何してんだろう?と、思いずっと見ていると、Bさんが私の顔を覗き込んできた。
「B─あかねちゃんが居ないと不安?」
「─え、いや。あの、あかねがおしぼりを持ってトイレに立ってて…」
「B─あ~。あれはね~、、二人っきりでいい事しようとしてるな……!!」
「─え!!!!!!」
わたしの予想が的中した!!!!
え、でもそんなサービスがあるって聞いてない!!!!
え!?まじですか!!!!
「B─ぶぁはっはっはっはっwwwwwwwww」
大声で笑うBさんの声にドキィィッっとした。
「C─トイレ待ち。」
「─え?」
横からCさんがボソッと口を開いた。
「─トイレ…待ち?」
「C─そう。」
そんな話をしていると、トイレからAさんが出てきて、
すかさずあかねがAさんにおしぼりを手渡して二人で席に戻ってきた。
あ~。なるほど。
と言うよりも、トイレ待ちしないとなのか~と言うビックリよりも、
Cさんが教えてくれたのが、ビックリした。
「C─本気にするからダメだってこの子」
「B─悪い悪いwwwwwwごめんねすみれちゃんwwww」
絶対悪いと思ってない。
それよりも、本気にするからこの子はダメな子って言われたような気分。。。
ちょっとしょんぼりしながらも、作り笑いをしながら色々お話をしていた。
「男性スタッフ①─失礼します。まもなくお時間ですが延長いたしますか?」
いつの間にかひざまずいた男性スタッフがAさんの足元に跪き時間が来たのを知らせに来た。
ここのお店では、60分コースから始まり、30分毎に延長が出来るシステムになってる。
「A─Cさんどうします?」
一番この3人の中で先陣を切ってたかと思っていたAさんが、まさかのCさんにお伺いを立てる。
「C─30分延長で。」
「男性スタッフ①─かしこまりました。ありがとうございます、ごゆっくりどうぞ。」
それだけ言うと男性のスタッフはその場を後にした。
「──延長もご指名もありがとうございます~♪」
ご指名?あかね指名されたのかー。
Aさんといい感じでお話してたもんね。
「A─あかねちゃんもすみれちゃんも可愛いもんね~♪これから毎日指名しちゃうよ~♪」
「──Aさんありがと~♪すみれちゃんも初指名良かったね♪」
え?
指名?私も?
「──あ、、ありがとうございます!」
わたしがAさんにペコっとお辞儀をした瞬間…
ゴチンッッッ
後頭部に衝撃をくらった。
!?!?!?!?!?!
振り返ると、不機嫌そうなCさんが私をにらんでいる。