デビューに備えて~メイク~
-10月28日 PM1:02-
仕事柄、昼休憩は皆さまのランチの後になる。
お腹を空かせながら、美味しそうな料理を運んでいるのは、まぁまぁクるもんがある。
今日は仕事の後に、いよいよ夜の世界デビュー戦!
自作のお弁当を食べながら妄想が膨らむのを抑えられない!
・・・お酒を作りながら、キラッキラの笑顔で接客している自分の姿を想像してはニヤニヤしている。
(これ言ったら、またゆうきに怒られるヤツだ)
色々妄想してたら休憩が終わる時間になってた。
仕事している時間ってやたら長く感じるのに、休みの日とか休憩の1時間ってアッと言う間なんだよなぁ。
(カップ麺を待ってる3分も長い!)
お茶を少し飲み、仕事場に戻る。
-PM2:51-
今日は会議室を使う予定もなく、定時にはあがれそう♪
お弁当を食べながら楽しい妄想だけをしていた時とは違って、
時間がせまってくるにつれて、ドキドキ緊張が増してきた!
デート前の乙女の様に、一分おきに時計に目が行ってしまう。
-PM3:01-
よし!!1分過ぎた!3時丁度だと、アレなんで少しだけ我慢した!w
「─すみません、この後歯医者の予約があるので、お先失礼しまーす!」
「──はーい!お疲れ様ー!」
ごめんなさい!歯医者は昨日行ったので嘘です!ごめんなさいごめんなさい!
先輩に声をかけて、一目散へ更衣室へ向かい、就職してからの早着替え最高新記録を更新し、外へ-
ゆうきとの待ち合わせは17:00。前回と比べて時間に余裕はある!時間にはね。時間には・・・
心に余裕がないーーーーー!!!
余裕がないにも関わらず急ぎ足でゆうきの待ってるカフェに向かう。
居た居た!約束の時間より20分も前なのに・・・しかも同じ席に座ってくれてる。
こういう所だよなぁ。気が利くと言うか、スマートな気配りが出来てる。
「─ゆうき来るの早いね~!お待たせ♪」
「──やほっ♪仕事おつかれぇい!」
「─ありがと!ってゆうき・・・何時間ここに居たの?w」
テーブルの上にはたくさんのお皿。
「──ん?16時くらい?ちょっと早く着いたから軽くたべちゃった♪」
「─軽く・・・ねぇ。」
「──まぁまぁ、過ぎた事はさておいて!とりあえず店長には話しておいたから面接行くか~」
「─面接?面接があるの?!履歴書とか書いてないけど?!」
「──履歴書は要らないよ~!身分証明書だけは必須!後はお店の応募用紙があるから問題ナッシン!」
「─ふぇぇ・・・働くのに履歴書要らないのか~。学歴とか職歴とか資格とか・・・」
「──いらぬ!学歴職歴資格関係なし!」
「─逆にちょっと不安もあるけど・・・」
「──お店が19時オープンだから、その前に来てって店長言ってたし、行くよ!」
「─・・・う、ん・・・」
「──あははははっwそんな緊張しなくて大丈夫だよw」
お店を出て電車で15分ほどの場所にお店はあった。
てか、前に来た居酒屋あたみの近くじゃん!!!
確かに飲み屋街だけど、まさかこの間本当にそのまま店に連れて行くつもりだったんじゃ・・・
「─お店この辺だったんだね~」
きょどりながらも冷静にゆうきに話を振ってみる。
「──そうそう~!だから、あそこの居酒屋を知ってたんだよね♪」
「─まさか・・・ゆうき・・・あの日・・・」
「──?」
キョトンとした顔を見せるゆうきの目には何の曇りもなかった。
私の勘ぐりすぎか。
「─いや、ごめん何でもない!」
「──ん?何もないならいいけどwはよはよ!店長待ってるよ~」
-店内 club JEWEL-
「──おはようございま~す!」
「─ォ・・ョゥ・・・ス」
自分でもビックリするくらいか細い小さい声
「──wwゆき!りらっくす~♪」
「──てんちょー?おはよおおおございまあああす!てんちょおおお!」
声デカッ!耳壊れるわ!
「*あかねおはー!!聞こえてるから!ちと待てって!ww」
男性の声が遠くから笑いながらゆうきに返事をした。
若そうな声・・・?店長・・・?笑ってる・・・?
緊張が少しだけ解けた。
「*ごめんね待たせちゃって!あかねおはよ~!」
店長らしき若い男性がこっちに向かいながら話しかけてきた。
「*はじめまして~。店長の桜木です♪」
「─あっ・・・!は、はじ・・はじめまして。小夏です。よろしくお願いします!」
「*ははっwそんな緊張しなくても大丈夫だよ~!って言っても、緊張するよねw」
「*こういうお店は初めて?」
「─あっっ・・・!はい!働いた事も飲みに来たことも足を踏み入れるのも初めてです!」
「*あははっw面白い子だね~w」
「─あ・・・はい。すみません。???あ、ありがとうございます?」
「*あははははwww」
「──ちょっ、ゆきwwww」
え?え??私変な事言ってる?
「*お腹痛いww純粋で面白い子は好きだよ!ハイ、採用ね♪」
「─えっ?!さ・・・!!あっ・・・ありがとうございます?」
「*採用って言っても、小夏ちゃんも出来そうかどうかなんて分からないだろうから、とりあえず3日間の体験入店からって言うのはどうかな?」
「─あっ!はい!それでお願いしましゅ!!・・・お願いします・・・。」
おもっくそ噛んだ!
「*あははははははっwwww」
「──ゆきおもろっwwwww」
涙を流して笑ってる二人を見てると、恥ずかしいやら、なんやら。
でも、想像してたより店長が怖そうな人じゃなくて、安心したかも。
「*はぁぁ・・・笑ったw笑っちゃってごめんね小夏ちゃん!じゃあ、そろそろ準備しようか!」
「─はい!よろしくお願いします!」
「──OKOKー!そしたら店長~、ゆきヘアメつけちゃうよ?」
「*いいよいいよ~!行ってらっしゃい~!」
「──ほら、ゆき、いこ~」
促されるまま、ゆうきに着いてく。
お店の向かいに大きなマンション型の建物に入りエレベーターに乗る。
「──ここの三階にある化粧品店に、ヘアメイクさんが居るんだよ♪」
「─なるほど…ヘアメイクさんが付かってくれた化粧品とかもここで買えるんだ?」
「──そうそう~!自分でメイクとか髪盛れたり出来る様になれば自分でやってもいいんだけどね!」
化粧やヘアスタイルにあまり興味のなかった私にはしばらくこの場所は必要そう・・・。
3階にある化粧品店に入ると、そこに名簿があって名前と店名を記入させられた。
本来なら、お店で使う名前を書くらしいんだけど、名前はまだないので小夏で書いておいた。
待合室で順番待ちをしてるとゆうきが呟いた。
「──そっか~。源氏名も考えないとだね~。今日までに考えててもらえば良かったね~ごめん!」
「─いや、いいよ~!名前って何でもいいの?苗字とかも必要?」
「──そうだね!基本的には何でも好きな名前でいいんだけど、被りはNGね!」
「─被り・・・」
「──そうそう~!同じ名前の人が二人居たらややこしいでしょ?」
「─あ~。そういう事か~。でも、苗字を付けたら被りにはならないんじゃ?」
「──ん~、それだと丸被りにはならないねー。けどね、苗字も被りは避けた方がいいよ。」
「─えー・・!そうなのかー・・・難しいなー。」
-”小夏様お待たせしました~。こちらどうぞ~”
雑誌に出てるんじゃないかって言うほどの指先までキレイな女の人がメイク部屋へ案内してくれた。
先に用意された洗顔料で顔を洗った後、さらに奥にある美容院の様な椅子に案内された。
先ほど案内してくれたキレイなお姉さんが向かい合わせに座り、顔をジロジロ見始めたきた。
遠くから見たり近くから見たり右から見たり前髪あげてみたり・・・。
こんなにまじまじと見られた事なんかなかったから、相手が女性であってもドキドキしちゃう。
「”透明感もあるし、綺麗な肌ですね~♪”」
「”いつも特別なお手入れとかされていますか~?”」
ふいに声を掛けられドキっとした。
「─あ、いえ。仕事柄いつも薄い化粧しかしてなくて・・・。特に手入れとかは・・・」
「”え~!そうなんですね~!本当に透き通る綺麗なお肌していますよ~♪”」
「”これからも綺麗なお肌が保てるようサポートしますね♪”」
「─あ・・はい!よろしくお願いします!」
こんなサポートまでしてくれるんだ・・・。
これってお給料から引かれたりするのかなぁ。
普通に美容系のお店行ったらそこそこの金額取られるヤツだよねこれ。
引かれるのかなぁ。引かれるよねぇ。引くかぁ~。
悶々と考えている間、担当となったメイクさんは淡々と化粧を進めていく。
美容院でもそうなんだけど、目を瞑って優しく頭を撫でられたりすると眠くなるよね?
その現象が今まさにココで・・・
仕事終わりにあれだけ緊張してたんだもん・・・ここは癒しだ・・・気持ちいいn・・・
「”--さ-ん”」
「”--な--さ--ん”」
んんぅ・・・?
「”小夏さん~♪”」
「─あ!!!ごめんなさい!!!寝ちゃってましたよね!?」
「”ふふっ♪寝ちゃってましたね~大丈夫ですよ~♪”」
「─すみません!気持ちよくてつい・・・!!」
「”いえいえ♪リラックス出来てたみたいで良かったです♪メイクの方も終わりましたよ~”」
「─あ!ありがとうございます。」
スッっと手鏡を渡され、恐る恐る鏡をそーっと覗き込む。
・・・・?
パッチリ二重
大きな優しそうなたれ目
ぷっくりとした涙袋
下まつ毛の下に何かがキラっと光って、それが涙の様にウルっと見える
赤すぎないほんのりピンクの頬
長すぎないくるんとしたまつ毛
ぷるるんとした唇
・・・・・・・?
はぇぇぇ・・・。
メイクってすげぇな。
いつもとは全然違う自分が鏡の中には居て、初めましての人を見るかの様に鏡を握りしめていた。
「”より綺麗になりましたね~♪お疲れ様です♪”」
優しい声のトーンでニッコリ微笑むメイクさん。あなたは女神です!
「─凄いです・・・!!ここまで変われると思ってなかったのでびっくりしました!」
「”ふふっ♪そう言ってもらえて嬉しいです♪”」
化粧台から、また待合室へ案内されて、ゆうきが出てくるのを待っている間、
自分の持ち歩いてる小さな鏡をポーチから取り出し、
実はあの鏡にトリックがあって綺麗に見えるとか・・・なんて考えながら覗き込む。
さっきの手鏡と同じ顔の私が映し出された。(それはそう。鏡ってそういうもんw)
どこをどうやったらこの顔になるんだ・・・?
右から見たり左から見たり下から見たり。
・・・あかん、下からはあかんやつだった。
上から・・・おおおお!!!これだ!左上からだとさらに良い!!!
一人で鏡と遊んでたら、ゆうきも終わって待合室に帰ってきた。
「──お待たせ~!・・・・・!!!!ゆきっっっっ!!!」
「─!!!!はいっ!!!」
大声をあげる声に条件反射してしまう。
「──ゆき化粧映えする顔だったんだね!凄いよゆき!」
「─凄いよね!凄い変わったよね!!」
興奮してはしゃいでしまうw
「──元は良かったのか~。」
「─元は・・・?」
「──いや、あはwほら、ゆきって化粧っ気なかったからさ~」
「─まぁ。うん。職業柄あんまりガッツリは出来ないからね。」
「──それを良い事に、ここまで自分の良さに気づかずに過ごして来たわけか~」
「─ぅ。確かに、化粧は面倒って思ってたし、化粧落とすのも面倒だし。」
「──お肌のお手入れに気を遣うのが面倒って事ねw」
「─そうともいう。」
「──そうとしか言わないからwwいや、でも凄い綺麗だよゆき!服選びが楽しみだね♪」
「─あ、そっか。服も貸してくれるんだっけ?」
「──うんうん~!ドレスはお店の更衣室にあるから選びに行こうか!」
メイク屋さんの様な化粧品店を出て、またお店に戻った。
ep.5までご覧いただきありがとうございます☆
中々名前の区別がつきにくく読みにくかったらごめんなさい!
始めたばかりで・・・なんて甘え言葉にしかなりませんが、
もう少し見やすくする方法などが見つかれば修正かけていこうかと思っています!