裂け目!
かつて、世界の平和を脅かす魔王がいた。
それそれは強い魔王だった。
「魔王‼︎今日が貴様の最後の日だ!」
彼は勇者アラレリウス。白髪の蒼の力強い眼をした青年だ。魔王を打つため単身で城に乗り込んできたのだ。
「フフフ…ハハハハ!最後の日だ?我に勝てるとでも?片腹痛いわ!」
彼女は魔王アクシスタス。漆黒の髪に周りを魅了する血のような赤の眼を持っている。
余裕そうに振る舞っているがその実四天王もやられ内心これが最後かもと腹を括っていようだ。
「行くぞ!魔王!」
勇者が威勢よく駆け込む。
「こい!勇者!」
その時だった。
グオオオオオォ。
謎の音と共に空間が裂けたのだ!
「なんだ!なにをした!魔王!」
「我はなにも…!お前がなんかしたんじゃないのか⁉︎」
魔王と勇者それぞれがなにが起きたか焦っている。が、どうやらお互い何かしたわけではない。
ブオオオオオオ
二人して空間の裂け目を見つめていると、急に割れ目が周囲のものを吸い始めたのだ。
「ま、まずい」
「吸われるぞ!」
逃れようと駆け出す勇者と魔王。しかし、吸引力の方が強く逃れられない。
「逃げきれん!」
「魔王、一回入ってみろ!そうしたら収まるかも!」
生贄に捧げるつもりだ。正直勇者らしくないが…元々は小心者なのだこの勇者は。
「バカいえ!あんな所に入ったら死ぬだろう!普通!アホか!」
「アホとはなんだ!これでも頭の回転は早いと自負しているんだぞ」
自負しているだけである。
「そうかい!ならその頭使って今どうやれば逃げられる考えるんだな‼︎」
「クソッなにも思いつかない!」
思いつかなくて当たり前である。だって自負してるだけなのだから。
「思いつかんのかい‼︎正直だな!バカめ!」
「今度はバカだと!ならお前が考えてみろ。魔王!」
ブオオオオオオン‼︎
さっきほどより吸引力のが強くなったようだ。
これではもう逃げられまい。
「まずい、逃げられ」
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(あ、勇者吸われた…)
「やばッ」
スポンッ
二人とも次元の狭間に吸われ魔王城には誰もいなくなり静寂に包まれた。