第1-3 せめて良き選択を
戦闘です。いいえ、銭湯ではありません。
戦闘です。
ダンジョンを進んでいると思い出したかのようにシンリー様から、一つの提案が飛んできた。
『装備した武器を隠してみたら?私のカルナ。もちろんわからなかったら‥
そういえば、隠れ蓑は持っている武器も隠すことができるのだった、というか、今まで武器のみが見えていたってことのか‥なかなかシュールな絵だったろう‥
取り敢えず、シンリー様の言うとおり心の中で隠れ蓑と念じて、刀とブレスレットもとい腕輪を隠すことにした。
「シンリー様。ちゃんと隠れておりますか?シンリー様?」
反応がない、ただの屍の、おっと‥シンリー様に対してこのような無粋なことを考えるなどシンリー教に反する蛮行でした。反省反省。と、いいますか、シンリー様本当にどうしたのでしょう?
「シンリー様、シン‥
『私のカルナ。わからないことがあったらちゃんと聞かないとダメでしょ?』
あ、これは怒ってらっしゃる。いや、激おこでごさいまする。反省せねば‥否!誠心誠意謝らねば!!
「シンリー様、私、シンリー様のお手を煩わせたくないのと、なにより一番最初にシンリー様より教えていただいたスキルの使い方を間違っていないか、シンリー様に見て欲しかったのです‥できたら褒めてほしくて‥申し訳ございません。」
真の謝罪とは、自分の気持ちを包み隠さずしっかり伝えそして、相手に本気であることを伝えることが大事なのである!前世にて携わった奥義の一つ【真の謝罪】シンリー様に響けばよいのだが‥
『褒めてほしくて‥へぇーー褒めてほしくてですか〜えへへ‥甘え坊ですね私のカルナは!仕方ないですね!今回は、許してあげますけど、ちゃんとわからないことはわからないと言ってくださいね。』
何故だろう、すっごく喜んでらっしゃる。感情の浮き沈みがライブのウェーブのように激しい‥だが、先程の謝罪がしっかり響いたのだろう!よかったよかった!しかし、気になる‥ちゃんと武器は隠れてるのだろうか?もう一度聞いてみよう。
「お許しくださりありがとうございます。ところで‥シンリー様。武器はどうですか?隠れておりますか?」
先程のこともあるので、少し抑え気味に質問を投げかけた。
『ちゃんと隠れておりますよ♪さすが私のカルナ!花丸をあげます。よしよし』
頭を撫でられてしまった‥なんというか、こそばゆいものだったが嬉しくも感じている自分もいる。これが母性の力かそれとも‥いや、シンリー様は、この孤独な世界で唯一私の事情を知っている人なのだから甘えてしまうのは致し方ないと思う。決してマザコンではない‥決して!というか、頭を撫でられて思ったのだからこの身体は、前の身体と比べてだいぶ小さいみたいだ。ダンジョンが終わったら町でも探して身体の確認をせねば。
あと、成功しているのであれば何故あれほど怒られていたのか‥いや、聞くのは野暮だ。やめておこう。
「ありがとうございますシンリー様。それでは、探索を再開しましょう!」
些細な疑問とともに、探索を再開した。
再開したのも束の間、目の前にびっくり仰天な展開が広がっていた。
《ガガ‥ギギ‥ギギ》
なんだ‥この生き物は‥
《ガガ‥ギギ‥ギギ》
歪な鳴き声と共に、気味の悪い生物がダンジョンを散策していた。
『私のカルナ。大丈夫です。』
「!?シンリー様‥」
シンリー様の声により冷静さを取り戻せた
『説明をしましょう。貴方の目の前にいる生物は、この世界ではゴブリンと呼ばれています。初級の魔物です。単体の力はそれほど強くはないのですが群れで行動をするため討伐するのは少し骨が折れる生物なのです。』
ゴブリン‥本当にファンタジーな世界にきてしまったのだな‥しかし、シンリー様‥討伐とは‥できれば戦わずにやり過ごしたいのですが‥そんなとこを考えているとシンリー様より非常な現実を突きつけられた。
『ゴブリンは、人を殺します。特に男を執拗に、女はゴブリンから辱めを受けることとなります。』
「シン‥リー‥様‥今‥なんと」
頭が追いつかない、整理がつかない‥今、シンリー様はなんとおっしゃったのだろう。
『私のカルナ。よく聞きなさい。ゴブリンは、人を殺します。人を殺すのです。優しい貴方のことです。ゴブリンも生きるためにしてるなら仕方ないと感じるでしょうが、そんなことはありません。魔物はマナというダンジョンや、外の世界に常に散布されているエネルギーを基に生活をしてるのですから‥殺すことは、ただの趣味なのです。そして、女を襲うことは、その趣味の一つなのです。』
なんだ‥そんなのただの殺人愛好者じゃないか‥殺される人には、家族や、愛する人がいてそれなのに‥どうしてそんな‥
『貴方が選んだ道ですよね?みんなを笑顔にする。そのために自分は厳しい環境に行ってたくさんの苦しんでいる人を救うのだと。この世界は、ある意味地獄です。魔物は勿論‥いえ、これはまだ早いですね‥さて、私のカルナ。貴方はどうするのです?選択の時ですよ。』
私は‥私は‥自然と腰の刀に手が入っているのに気がついた。そうか‥私は、その為に私はこの世界に‥
『決めたのですね。私のカルナ‥茨の道ですよ。それでも、闘うのですね‥』
「はい。シンリー様。それが私のこの世界での新しい道ですので。」
『行ってらっしゃい…私のカルナ』
休日だからか、指がよく動きます。