風邪……ひいちゃった
良子ちゃん、どうしちゃったの!?
それはいつもの登校場所には良子ちゃんがいなかったときから始まる。
あれ?と思いつつも教室にいるだろうと思った私は授業が始まってもいないことから不安に思い始める。
先生「今日は一人来ていませんが、彼女は風邪でお休みのようです」
少しだけざわつくか、あるいは私の思いこみか、良子ちゃんがいなくなったことにクラスが騒然とした。
いつもの笑顔が消えた机。
誰もいない椅子。
良子のねーねー、がうっとうしいと思いつつも話しかけてくれたことにとても感謝していたことが分かった。
本当に閑散とした教室。花が散ったような心のぽっかり感。
お弁当を食べる時間になって一人で食べているけど、いつもは良子ちゃんと笑顔で、たまーに笑いを取られて食事を吹き出してしまうこともあるけど(食事中の方ごめんなさい。良子ちゃんのせいです)、でもそんな良子ちゃんは今日はいない。本当に姿を消したようだ。何だか物悲しさを感じる。いつもはいたのに……。
続く午後の授業。良子ちゃんから「宿題やってないんだよね」「私バカだから分からないんだよね。教えて」と相次ぐ頼りにその回答に、毎度お笑い芸人のコントのように「自分でやりなよ」と怒っていたものの、今日はその声が一件も届かない。
良子ちゃんは、本当に今日は来ないようだ。
悲しくて、寂しくて、胸がキュっとしまる。
そんな時間が過ぎ去り、放課後の時間になる。
良子ちゃんの笑顔を思うと、やりきれない。
私は人が驚くほど真っ先に教室から出て、
はぁはぁと息を切らせながら、
良子ちゃんのお家へ向かった。
ピンポーン
ママ「あら、桜ちゃんじゃない?」
桜「あの!!良子ちゃん、いないんですよね!?」
ママ「良子は風邪なのよ。悪いけど帰ってもらうね。うつるといけないから」
桜「あ……あ……あ……」
ママ「?」
桜「あの!じゃあ、お見舞いということで来ました!」
ママ「でもうつると悪いから」
桜「短時間だけ、ちょっとの時間だけでいいんです!良子ちゃんのお部屋におじゃましてもらえませんか!!」
ママ「ううーん。じゃあ、じゃ短時間だけよ」
桜「本当ですか!?ありがとうございます!!!!」
良子「悪いね、お見舞いに来てもらって」
桜「もう!心配したんだよ!」
良子「お見舞いはフルーツかパフェだと嬉しいな」
桜「何バカなこと言っているの!!?」
良子「えへへ ごほっ!ごほっ!」
桜「大丈夫!?」
良子「平気。……たぶんね」
桜「熱計った?」
良子「だいぶ前計った」
桜「今どれぐらいか計っていい?どれどれ……」ピピピ ピピピ
良子「どう?」
桜「39度9分。高熱じゃん!」
良子「まじ!?げほっ。げほっ」
桜「寝ないとだめだよ。急いで。薬は飲んだ?」
良子「飲んだ。今寝て冴えてしまったところ」
桜「寝ないとだめだよ。死んじゃうよ」
良子「桜は相変わらず優しいな」
桜「熱さまシートは?」
良子「あー、だいぶ前に張り替えた」
桜「入れ替えるね」ピタッ
良子「冷た!元気がでるよありがとう」
桜「……そうだ!服着替える?」
良子「そうだね。こんなに熱いんじゃ死ぬよ」
桜「タオルとパジャマの予備は……枕の横にあった。良子ちゃん、着替えるよ」
良子「悪いね、服まで着替させてもらって」
桜「背中、汗びっしょりじゃん」汗ダラダラ
良子「あはは……」
桜「タオルで拭くね。くすぐったいけど我慢してね」ふきふき
良子「あー、私。こんなに汗流してたんだ」ダラダラ
桜「よいしょっと。次、脇上げて」
良子「おっぱい触りたいだなんて桜もエッチになって……ごほっ、ごほっ!」
桜「なに バカ なこと言ってんの!!!そんなんだから風邪ひくのよ!」ふきふき
良子「実はね、昨日。雨の中で遊んでお風呂に入るのを嫌がってたらこうなったんだ」
桜「気を付けようね」
良子「はい。マジですみません」
桜「ズボン張り替えようか。自分で脱げる?」
良子「お願い」
桜「……」
良子「……」
桜「終わり!」
良子「ありがとう……」
桜「さ、寝て」
良子「うん……」
桜「調子はどう?」
良子「頭ががんがんする……。体が熱い」
桜「大丈夫?」
良子「変なものが見えるみたい。桜が2重に見える」
桜「お医者さんにはかかった?」
良子「うん。重い風邪だって。全くついていないよね」
桜「ねえ、今日心配したんだよ。みんなで」
良子「……ごめんね」
桜「良子ちゃん、いつも一緒に笑ってくれるのに今日に限っていなくなるんだもん」
良子「……」
桜「正直……/// 寂しかった///」
良子「あはは……ごめんね。桜は正直者だね」
桜「う……うるさい。……死んじゃえ///」
良子「あはは……///」
桜「あの……この病気、死なないよね?」
良子「重い風邪だから、こじらせるとやばいかも」
桜「やっぱり」
良子「うん」
桜「……」
良子「……」
桜「良子ちゃん」
良子「桜?」
桜「死んでほしくない……ほんとに……」うるうる
良子「何泣いているのよ。バカね。死なないわよ」あはは
桜「でも、風邪、拗らせたら死ぬんでしょ。ニュースで知ってるよ」
良子「……いつか私もそうなっちゃうかもね」
桜「いやだよ!そんな!」涙
良子「ううん。体が弱っているもの。仕方ないよ」
桜「やだよ!!!!」
良子「!」
桜「良子ちゃんと出会ってからいろいろ変わったもん!色んなこと教えてくれた!楽しいってこと教えてくれた!!!私の一人ぼっち生活を変えてくれた大切な人なんだもん!!!!」
良子「ううん。違う。私は一人」
桜「違わない!!!!良子ちゃんはいつだって優しいから。イケメンで運動が何でもできるすごい人だよ!私の……」
良子「……」
桜「……憧れの人///」
良子「桜……///」
桜「良子ちゃん。できるなら、一緒に死にたい。嫌だけど。死にたい。一人はずれにしないでほしい///」涙ぼろぼろ
良子「ありがとう。こんなこといってたら、私だって泣いちゃうよ///」涙ぼろぼろ
桜「風邪を……私にうつさせて///」
良子「うん///」
桜「……」ドキドキドキドキドキドキ
良子「……」ドキドキドキドキドキドキ
桜「ん……」涙
良子「ん……」涙
桜「ちゅ」
良子「ちゅ」
桜「……///」レロレロ レロレロ
良子「……///」レロレロ レロレロ
桜「ん……」レロレロ レロレロ
良子「んん……」レロレロ レロレロ
桜「んふ……」
良子「んん……」
桜「……」
良子「……」
桜「ぷはぁ///」
良子「ぷはぁ///」
桜「……」
良子「……」
桜「うひひ///」
良子「あはは///」
桜「うひひひひひ///」
良子「あははははは///」
桜「二人だけの、秘密だよ♡」
良子「明日、本気で風邪うつってもしらないからね!!!」
桜「へーき、へーき。あはははは」
良子「あはははは」
桜「あ、体が、光った」良子に変身!!!!
良子「あーあ。人が風邪ひいているのになんてことやってくれるの(笑)」
桜「へーきだって」
良子「ずっと一緒だよね?」
桜「うん!」
そして翌日、私桜は風邪ひきましたとさ。
一方、良子ちゃんはピンピンで私の部屋にやってきましたとさ。
良子ちゃんには、
なぜキスしたのか、
なぜキスに至ったのか、
恨みしかないです。
by 桜