女の涙に勝てる者などいない!
『どーする、ここまで着ちゃったけど』
『どーもこーも無いでしょ、今更引き返すってのあんた』
『そーは言ってないよ』
『もう地球に人類居ないからね、帰っても意味ないっしょ』
『だーかーらー僕はどーするって言っただけじゃないか』
この会話は惑星調査開拓宇宙船のメインコンピューター内に存在する個別に性格設定された疑似人格のものだ。
人類は滅び、開拓予定の惑星には人がいて、しかも魔法が使われている。
にっちもさっちも行かない状況だ。
『でもさ、まだ人類が全部死んじゃったとは限らないよね』
『あんた良いこと言うじゃん。そうよね、もしかしたらコッチに向かってるかもね』
『つー前提にしとかないとツレーもんな』
『じゃあ、一応地球から移民が来ると言うことで現地人とコンタクト取ろうよ』
『誰がやるんだ、魔法なんて訳わかんねーもん使ってる連中によー』
『・・・・・』
『ここはこういうのに詳しいユミちゃんがいいと思うけど』
『タロスケ、何で私なのよ!いってご覧なさいよ!』
『そーいやーユミはファンタジー小説好きだったよな』
『そりゃあ宇宙を監視してるとき読んでたけどね。こういうことが現実に有るなんて思いもしないわよ、弥助は予想できたっていうの!』
『ねーな、あり得ねー。当分調査分析しねーと対応出来ねーな』
『悠長な事いってんじゃないわよ、もし超時空間航法で来てる最中だったらどーすんのよ!職務怠慢とか言われちゃうのは私は嫌よ』
『だったらユミがいけばいいじゃんなー』
『まあまあ、ここは仲良くしよーよ。弥助君もちょっと言い過ぎだと思うよ』
『悪かったよ、ユミ。俺が悪かった』
シクシクシクシク
『なかしちゃったー、弥助君がユミちゃんなかしちゃったー』
シクシクシクシク
『悪かったってー、ゴメン、ごめんなさいって言ってんだろがよー』
シクシクシクシク
『分かったよ!俺がなんとかすっから泣くんじゃねーよ』
『ホントに、ホントね』
『男に二言はねーってんだい!コンチクショー』
『じゃあ、コンタクトの手順はユミちゃんで、魔法の分析と対処方法は僕が考えるよ』
『あいよー、終わったら連絡してくれよ』
宇宙船から偵察衛星が解き放たれる。
『そう言えば先行調査船どうなってるのかな』
『連絡が途切れたまんまなのよね、このデータ150年前のでしょう』
『僕らが着くのは500年後なんだよね』
『かなり変わっちゃってるかもね』
宇宙船は逆噴射しながら一直線に目的地に向かっているのであった。