忍の技は暗殺に使いましょう。
弥助がアグリス帝国の貴族とのトラブルを解決したころマーモ一行も峠のカフェテリアでアグリス帝国から来た貴族一行と揉めていた。
「ふん!全く持って貴族に対する事がどういうものか分かっとらん!」
マーモ一行がカフェテリアに入り注文を頼み寛いで居たとき、あとからやってきたアグリス帝国の貴族一行がドカドカと入ってきて給仕を困らせるようにワザワザ急かせるように注文を立て続けに言う。
給仕を困らせ、ほかの客をいやな気分にさせる貴族一行。
とうとう店長を呼び出せといった騒ぎをしだす。
「五月蠅いわよ!そこのおやじ!」
ユミが切れる。
「なんだ、貴様ごとき獣人風情が」
「表にでなさいよ!このロクデナシ人型知性体のボンクラ貴族!」
実は弥助よりもユミの方が喧嘩っぱやい。
弥助は状況をよく見て自分が絶対有利かつ対価が得られるか、得られるような変化を作り出してから喧嘩を売ったり買ったりしているのに対し、ユミは目の前に自分にとって不快な場面があれば即座に処理しようとする。
ユミにとって人型知的生命体はその程度の物なのだ。
そういう意味では弥助は物事を公平に見ようとしていた。
ユミとボディーガードのマリアが貴族一行を引き連れてカフェテリアからかなり離れた草原で対峙する。
「貴様ら獣人と人間がどう違うか思い知るがいい!」
数人の騎士が二人に剣で切りかかる。
「マリア!やっちゃえ!」
マリアが頷くと光学迷彩を解いた4人のメイドが現れる。
見た目をそっくりに変えたメイド。
一応分身の術っぽい戦術である。
2人のメイドが切れないものがない超振動波を纏った刀で剣を切り裂く。
残った2人も騎士たちに太ももに装備してあった楔型手裏剣を放ち心臓を鎧ごと突き刺してしまった。騎士たちが倒れた背後で2人の魔法使いが炎の詠唱が終わる間際、マリアはアサルトライフルのフルオート射撃で一掃。
この間10秒もかかっていない。
「最初からアサルトライフルで良かったんじゃないのマリア」
「色々な戦い方を試して魔法に対処してみたかったのですが、その様ですねユミ様」
「まあ、これからも試させてよユミ姉。忍術っぽい感じでカッコ良く決めてみたいんだよねー」
メイドのカレンが印を結ぶポーズで決める。
「弥助・・・刷り込んだわね」
「ユミ様、武器弾薬の節約という側面も御座いますので、ご容赦ください」
「ハイハイ、わかりました」
数体の死体を呆然と眺める貴族。
「貴様ら、我らアグリス帝国と戦争をする事になるであろうぞ!」
ユミが貴族の頭に弾丸を撃ち込む。メイドのアサルトライフルにもユミの拳銃にも消音器が装備しており遠くまで発砲音は届かない。
「エアージャガーにコイツをアグリス帝国の森の中に運ばせておいてね」
空を見上げると音もなく浮かぶヘリコプターっぽいものがいた。
そこから投下された袋に2人のメイドが金目のものを剥ぎ取った死体を入れてエアージャガーに吊り下げる。
その間に光学迷彩で見えなくなった2人のメイドが貴族の馬車を運んでくる。
「火炎放射器もってきといて良かったわねカレン」
「忍法火炎の術ってかんじー!」と言いながら馬車を燃やすカレン。
もちろん馬は頂戴する。
ちなみに貴族は因縁をつけていただけで誰も怪我などさせていない。
「さて、何もなかったと言うことで皆さん宜しくって」
「ハイ!お姉様」
マリアのほほえみに元気よく答える4人のメイドであった。
「あのアグリス帝国の貴族はどうしたんですかな、ユミさん」
心配そうな顔でマーモがユミに問う。
「私がよーく言い聞かせたおかげで納得して国に帰りました」
「さすがユミ様、弁が立ちますなー」
マーモはユミを頼もしく思い目を細めるのであった。