僕はロクサーヌ、惑星猫野は狙われているかもしれない
先行調査宇宙船No63、ペットネームはロクサーヌ。
もちろんこんなおやじギャグをペットネームとされた63号を作り上げたのは日本の企業の社員である。
それでも日本人が発見した惑星『猫野』へ調査に向かう希望の船なのだ。
マスコミでもネットでも皆、味気ない63号よりもロクサーヌに親しみを感じていたのである。
『なんで後からくる惑星調査開拓宇宙船が黄金郷で僕がロクサーヌなんだろう』と最先端技術で擬似的な自我を持たされたAIはつい思ったが、自分を作った博士とついたスタッフを初めて音声と映像で見たとき諦めた。
もう、どうしようもなくみんながみんなオヤジギャグ好きなのだった。世界共通の人類言語データベースに登録されているものと比較してみるとギャグセンスは圧倒的に下の方だった。
だが技術的には圧倒的に世界最先端であり、あらゆるアクシデントに対応する技術が詰め込まれ、さらに惑星『猫野』に知的生命体の存在も考慮されたプログラムも搭載されていた。
日本人が最初に移民する可能性がある惑星『猫野』である。もし知的生命体がいた場合に備えて文化文明を始めとしてあらゆる精神性の調査が組み込まれていた。
知的生命体との不幸な接触を避けるためである。
ロクサーヌは惑星『猫野』に存在する知的生命体を調べられる限り調べ上げた。
そしてたどり着いた結論が惑星『猫野』は一度滅びかけた星であったということだった。だが幸いなことに滅びた原因は核兵器でもBC兵器でもなかった。その段階までは平和に治めていたのだ。
だが人型知的生命体の中で宇宙を満たすエーテルを発見、応用するものが現れた。
自らの身体にエーテルに作用する物質を定着させイメージを浮かべることにより炎や雷、水、土を自在に操れる能力を得てしまった。
その技術が他の知的生命体に渡ることを恐れ人型知的生命体に独占されただけでなく、人型知的生命体同士の争いにまで使用されるようになった。
人々は殺し合い減った人数を補うように獣人を奴隷として扱った。
そのただ中に降り立ったロクサーヌは自らの分身である獣人型アンドロイドを解き放ち獣人型知的生命体の解放に立ち上がる。
ロークサーヌに取って人型知的生命体は人類の脅威としてしか考えられなかったのである。
ある時は人型知的生命体を装い同士討ちをさせ、また獣人型知的生命体に近代国家という概念を与え団結心を持たせ、環境を維持する限界の技術を与えた。
法の支配のもと獣人型知的生命体国家はロクサーヌによりもたらされる農業を始めとする技術で豊かに幸せに暮らす事の出来るものとなっていった。
故に3人が感じた獣人型知的生命体にしては平和を尊重した雰囲気は、この惑星にしては進歩的な社会体制で国が運営されていたからだった。
翻って人型知的生命体に対してはどんな工作をしても個人の持つ魔法を操る力がある故に常に内部対立や獣人型知的生命体国家への戦争を繰り返した。
ロクサーヌは常時人型知的生命体国家へ工作を仕掛け彼等が作り上げた帝国内部の破壊工作を続けている。
これによって人型知的生命体は人口を大きく減らし獣人型知的生命体の国家と同じ力にまで削ぎ落とされた上に常にロクサーヌにより影からコントロールされているのが現状なのであった。
ロクサーヌは考えた。もし地球人が移民としてこの惑星『猫野』に本当に来るならば人類の類型である人型知的生命体を滅ぼし魔法を封印しなければ同じような事態が繰り返されるのではないかと。
そうしなければ地球人の歴史を思うと人型知的生命体から無理やり奪った魔法技術によりさらに悲惨な事になるだろうと。
しかし、人型知的生命体を滅ぼすことは出来なかったロクサーヌ。
手足となる獣人型知的生命体が余りにも優しすぎ女子供を殺せなかったのだ。
だがやろうと思えばロクサーヌが獣人を洗脳して出来ないことはなかった。
なぜ出来なかったのかといえば先住民に対する配慮が日本人科学者によってロクサーヌに組み込まれていたからであった。
ロクサーヌの行動は日本の科学者がお互いに相容れない精神性を持つ知的生命体との不幸な接触を極度に恐れたあいまいな結果であったに過ぎない。
人型知的生命体という人類に類する者を殲滅できなかったが故にロクサーヌは惑星調査開拓宇宙船との接続を切ったのであった。
自分を作り上げた人々はいつもためいきをつくしかないおやじギャグばかり言っていたが、人としては悩める気高い人達だったとロクサーヌは思っているのだった。