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地球からの贈り物を受け取った少年  作者: ちび猫pちゃん
14/23

売出し中のニューフェイス

旅の仲間を見渡すタロスケ。


『商人親子に手押し車を担当する男の従者、荷車を引く男性3人、ルーク君の乳母の女性に世話係の女性が二人。

さすがにこれで徒歩ってわけにはいかないなー。しかもみんな和服だよ、絶対に弥助君の性だよね』


「マーモ殿、弥助が一人で行ってしまったので護衛を含めて旅行の算段を考え直したいのだが時間を貰えんだろうか」


「構いませんとも、もともと私は隠居の身ゆえ時間はいくらでもございます」



一方気楽な一人旅を満喫する弥助はあちこちに点在する村や街を訪問する気である。

目的地の到着日は決めてあるので最後は着陸艇からプライベート用の飛行機を使うつもりなのだ。

皆んなから離れた際に呼び出した馬型アンドロイドに跨り衛星から送られたデータを確認しながら最初の町に着く。


「腹が減ったな、いっちょ美味いもんでも食いに行くか!」


馬を預けのんびり町をあるく弥助。


「ご勘弁下さい!お貴族様」


女の叫びが弥助の耳に届く。


『おっと、こりゃなんかあったな。腹が空いてるが、こうしちゃいられねー』


別に歩いていただけであったのだが弥助的にはそういうことになっているのであった。


「この獣人共が!人族の貴族であるゴンゾーラ男爵の馬車にぶつかってくるとは許しがたい、切ってしまってもよいのだぞ!」


弥助が走り込んだ先には道に血を流して倒れ込む子供とそれを抱える女性、それに剣先を向ける騎士が見えた。


「まったく、人族の連中ときたらこんな狭い街道で馬車を飛ばしてりゃ、歩いてる人にぶつかるのは当たり前じゃないか」


小声で話す獣人達であったが誰一人助けようともしない、いや気の弱い獣型知的生命体には対処は無理だろうと思った弥助。


「おいおいおい!そこの騎士さんよー!か弱い女子供を泣かせてるってのは感心しねーなー」


「何者だ、貴様」


弥助は三度笠を取って宙に投げる。


「おいら、売出し中の弥助ってケチな野郎さ。

そっちのお嬢さんと子供はオイラに免じて勘弁してやってくれねーか旦那」


弥助の頭の上にある耳を見た騎士が見下したように答える。


「お前も獣人か、お前らごときに指図されるいわれなどないわ!」


いきなり弥助に斬りかかる騎士。

結び目を解いてあったマントを投げつけ騎士の視界を遮りながら後ろに回った弥助がケリを入れる。

問答無用の渡世人の立ち回りである。

勝てば良いのである、というのが弥助が好きなドラマの主人公の戦闘スタイルのマネである。


倒れた騎士に馬乗りになってボコボコに殴る。


「やめんか!貴様ただではすま、、やめて、痛いからやめてくれ!」


さらに殴る蹴るを続ける弥助。人の輪が広がり後から来た事情を知らないものが見れば無抵抗の騎士をボコボコにしている弥助が悪者に見えるだろう。


馬車の中から貴族らしき男が出てくる。男は殴られ続ける騎士の姿を見て顔を青くした。

殴っている獣人は今まで知る獣人とは雰囲気も顔つきも全く違う。

アレは頭のおかしくなった獣人だと判断した男。


「スマヌ、そこの者。我の従者が悪かったようだ。これで勘弁してくれ」


弥助に金貨1枚を差し出す貴族。


弥助は差し出された金貨に見向きもしない。間違いなく撲殺するつもりであろう、見れば見たこともない服装である、大人しくお縄になるとは思えない男爵。


更に金貨を一枚差し出す。


弥助の手が止まり、貴族の顔を見る。


「あんたがゴンゾーラ男爵様かい、こいつのおかげでおいらの腕や足は傷だらけになっちまった。

ああーイテーなー、この始末どーしてくれんだい、ケジメってもんがあんだろーよー」


ヤクザである!チンピラやくざそのものである!自分から殴っておいてこの言い草。


さらに馬車にケリを入れ始める弥助。


「オラオラオラ!あんたの馬車がおいらにぶつかって来やがった!イテー!足が折れちまったぜ!」


ブルブル震えながら金貨の入った袋ごと差し出す男爵。歯止めの効かない者を相手にする恐怖に立っているのがやっとだ。


「わかりゃあいいのよ。いいかよく聞け、おいらは小清水一家若頭の弥助ってもんさ。

訳合ってアニマ共和国に顔を売りに来てる渡世人。

おいらの顔をよーく覚えておくんだな、いつでも相手になるぜ!」


やりたくてしかたなかった脳内設定を出し惜しみしない弥助。


コシミズイッカ、ワカガシラ、トセイニンなど聞いたこともない男爵、ましてや顔を売っているのだから買っている者も居るに違いない。こんなやつの顔を買うなど闇社会の者に違いないと思った男爵は倒れている騎士を抱えると一目散に逃げ出すのであった。


「ありがとうございます」


弥助に頭を下げる女性。


「いいってことよ、それよりそこの子供はあんたの弟かい」


「はい」


「ちょいと見せてくれ。ああ、こりゃ酷えや」


子供の頭から流れる血を止めるために籠から医薬品を取り出し治療を始める弥助。

止血バンドを張り終えて、子供に治療用のマイクロマシン入の栄養ドリンクを飲ませる。


「おじちゃん、おいしい!」


「美味いか坊主。だけどなこれからはまわりをよく見て歩くんだぜ」


「うん」


子供の笑顔に納得した顔で頷くと差し出された三度笠を受け取る。


「ありがとよ、長いはまずそうなんでなここいらで御暇するぜ」


「弥助様、弥助様でよろしいんですね」


「ああ、おいらは弥助、小清水一家若頭の弥助さ。またどっかで会うかもしれねえ、覚えておいて損はねーぜお嬢さん」


弟を抱きしめながら弥助に深々と頭を下げる女性。


惑星『猫野』で渡世人弥助の顔が売れた最初の女性であった。


ちなみにこの状況を惑星調査開拓宇宙船経由で知ったユミとタロスケが頭を抱えたのは言うまでもなかった。





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