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その世界を照らしに  作者: そいるるま
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7

 明歌がステージに向かった。隼優はしばらく立ちすくんでいたが、突き飛ばされ、床に尻もちをついているたくみに手をかして「すまない……」とつぶやいた。

 明歌が歌った曲は日本人が作曲したミュージカルの曲だったが、現在は比較的クラシカルクロスオーバーとして、単体で歌われることが多かった。

 外国人にとって日本語とは、その言葉そのものが一種音楽のように聴こえるらしい。言葉の意味がわからなくても、明歌のアカペラに聴き入り、その場にいたほぼ全員の客が静まりかえっていた。

 そのステージの横には個室があった。そこに四、五人で食事をしているグループがいたが、その中のリーダーが歌を聴いてつぶやいた。

「ふん、セイの目は節穴か? 声は美しいがあの程度の歌手は山ほどいる」

その男性はがっかりしたようだった。

 

 はぁ~、と日本で明歌たちの帰国を待ちながら、誠が事務所でため息をつく。

「やっぱりやらかしたかぁ。いくら威嚇射撃だからってシャレにならないよなぁ。隼優のやつ……」

加納がくすくす笑っている。

「なかなか予定したようにはいかないものだね。海里が酔っぱらうなんて予想外だったし」

「かすり傷でも負ったらご両親にどう言い訳されるつもりだったんですか」

「たくみが運転していたら、かすり傷もあったかな。運転しながら敵に対処するのはさすがにたくみでもね」

 たくみは海里が二日酔いで倒れたことを交渉前に加納へ連絡した。タクシーに乗ると言ってきたので、問題はないだろうと判断したのだ。

 その時、電話が鳴り誠がとった。相手の話があまり聴き取れず、困った顔をしている。

「加納さん、相手が英語でなんか話したいって」たくみがいないとこれだからなぁ、とぼやきながら誠は加納のデスクへ転送する。

「ああ、……はい、じゃあ、投資先へ話を通しますよ」加納はしばらく英語で話をし、電話を切った。

「――誠、交渉はどうもこのまま進みそうだよ。あとはクライアントに引き渡すけどね」

「は? だって、あんなに怒らしたのに? やっぱり明歌ちゃんですか」

「明歌ちゃんは最後のダメ押しだ。レストランにいた幹部は難病で苦しんでいたが、次の日は劇的に改善したらしいからね。ただ、隼優が何か相手の核心をついたかな。たくみは図星をつきまくっていた、と言ったけど」

 隼優が交渉の挨拶を終えた時点で、アランは投資に興味を持ったが、若者にプライドを傷つけられ、腹の虫がおさまらなかったようだ。

「あいつらを二度とよこすな、だってさ」

 ――帰ってきたら隼優にぶっ飛ばされるな、と加納は苦笑する。普段は年のわりに冷静な隼優だが、明歌のことになると別人のように気が動転してしまう。

「……誠。空港に迎えに行ってくれ。そろそろ着くだろう」

「行きませんよ。加納さんを一人にすると、ろくなことがない。彼等なら海里が運転して帰ってくるでしょ。それに僕は夕方からデートです」

「なんだか私はとんでもない間抜けみたいだ」

そう言って、加納は首をすくめた。



その世界を照らしに 序章 「アメリカ編」 END


次回 第1章 「加納の(ちから)



この作品に訪れてくださっている皆様、いつも本当にありがとうございます。

大変感謝しております。


序章はどちらかというと、明歌たちの途中のストーリーから始まっているので、何が何だかわけわからない感じもあったと思いますし、加納がなぜああいった仕事をしているのかもナゾかと思います。


次回の第1章からはそういったところが少しずつ明らかにされていきますし、実はこのメンバーの中でかなり重要人物である明歌の兄もちょこっと初登場です!


隼優と明歌は加納の事務所でバイトしていますが、隼優は苦労人なので近くの喫茶でもバイトしています。その喫茶店はこの先もちょくちょく登場しますが、実在はしませんのであしからず……


まだ先の章にはなりますが、重要人物は少しずつ出てきますので、皆様が誰か1人でも気に入っていただけれると嬉しいです。もし、気に入っているキャラクターなどがありましたらぜひお知らせください。ストーリーは決まっているので変更できませんが、キャラクターの登場を予定より増やしたりはできると思います。


次の章でもまたガイドブックを書きますので、そちらもよろしければご覧ください。




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