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その世界を照らしに  作者: そいるるま
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5

 車で待機中の海里は、日本で技乃が開発した超小型ドローンの説明を受けている時のことを思い浮かべる。

「技乃、このゴーグル、すごいよ~ドローンが後方から撮ってる映像、そのまんま転送すんだね」

技乃という青年はあまり冗談が通じないバリバリの理系だった。

「厳密にはそのままではありません。動いている物体のスピードがわずかに遅く見えるようなしくみを備えています」

「スローモーションってこと? だけど生中継でスローは無理じゃないの」

「あくまで人間の脳が知覚できるように瞬時に補正する程度です」

――意味不明だ。海里は理解できないことを誤魔化そうとして目が泳いだ。

「だけどさぁ、何なのよ、このゴーグルの形は。何とかならないのか」

「どうにもなりません。それは加納先生が考案されたんですから」

「だめだよー。先生はセンスないんだから~」

「海里さん。」技乃の瞳がキラッと光る。

「何よ」

「それは本当にセンスの問題なんですか」

「……え?」


 一方、明歌たちは海里の車に向かって、必死の形相で走っている。

「右斜め!」

「かがんで!」たくみが二人に次々と指示を出す。たくみの指示でスナイパーの銃弾はかすりもしない。

走りながら隼優は「こいつ……人間じゃねぇ!」と度胆を抜かれていた。たくみから見れば、隼優の武術の方が人間技ではないのだが……

三ブロック先を右へ曲がると、海里の待つグレーの車が見えた。

「あれか!」

「後部座席に乗り込んだら、頭を低くしてください!」

隼優は明歌を先に車へ押し込み、自分も乗り込む。最後にたくみが乗ってドアを閉めた。海里が車を発進させる。

「ふわぁ~」三人は後部座席でへたり込んだ。

「大変だったね~ハチ子が大活躍だな」海里は運転しながら他人事のように言う。

「──ハチ子?」明歌が海里に聞いた。

「そう、ブンブン飛んでたでしょ? 蜂みたいなのが。あれがハチ子。先生が名付けたんだ」

「あれは、超小型ドローンなんです。技乃が開発したんですよ。あれを上空に飛ばしていたから、スナイパーが一人しかいないとわかったんです。それとハチ子はカメラを搭載しているので、後方の映像をこのゴーグルの右側に送るんですよ」

たくみはゴーグルを外しながら説明した。

「それはわかるが、いくら映像が見えるからって、たくみはあの弾が見えんのか?」隼優はさっきからそれが気になっていた。

「弾自体はさすがに見えにくかったけど、銃口が向いてる方角ははっきりわかりました」

「それに、たくみは動体視力の訓練を受けているしね~。インストラクターがさじ投げたらしいよ。たくみが優秀すぎて教えられなくなっちゃったんだって」

海里の口調がどうもへらへらしている……

「加納さんは僕たちに相手の攻撃をかわせるよう、さまざまな事を教えてくれるんです。明歌さんは無理だけど、僕が見たところ、隼優さんもこの程度のことはできるようになります」

「私は訓練を受けてもダメなの?」明歌がたくみに聞いた。

「運動神経と連動しているので。難しいんじゃないかと……」

「残念だったな。明歌。」隼優が得意げに笑った。

「さぁ、海里。そこで止めて。もう大丈夫だから運転を変わろう」たくみが後方から海里の肩を叩いた。

「おいっ、まさかまだ酔いが醒めてねぇのか!」

「へへっ、大当たりぃ~」海里がそう言うと車がよろけた。

「きゃあぁっ!」明歌もバランスを崩して悲鳴を上げた。




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