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その世界を照らしに  作者: そいるるま
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2

歌い終わると、みんなが軽く拍手をした。海里が不思議そうな顔をして明歌に聞く。

「いい曲だなぁ。聞いたことないけど、誰の曲?」

「えっ、あの……自分で作ったの。咄嗟に」

明歌が恥ずかしそうに答える。

「ええっ? 明歌ちゃんって作曲もできるの?」

「作曲――って感じじゃなくて、ほとんど鼻歌? みたいなものよ」

誠が立ち上がった。

「明歌ちゃん、今の曲、もう一度歌える? 僕が低音をハモるよ」

「おやおや、英語はちっとも覚えないのに、音になると一回で覚えてしまうんだなぁ」と、加納があきれたように言った。

加納は誠と出会った日に、この特殊な能力を見抜いた。それが自分の事業の役にも立つと思い、誠をスカウトしたのである。

 誠が加わり、明歌がもう一度歌い出した。一度も合わせたことがないのかと疑わしいほどぴったりとハモっている。誠は一度聞いただけで、彼女の歌い癖などを把握しているようだった。隼優が二人の即興に感心する。

「驚いたな……、二人だけでCD出せそうだ。それにしてもおまえはどーしてそう、音程を外すんだ? それに、さっき歌ったのと違わねぇか?」

「うん、だって適当に歌ったから。誠ってすごいよね。それでも合わせられるんだもん」

「リズムと調が変わらなければ合わせられるよ」

「まぁ、あとはカラオケボックスかなんかで一人で練習しといてね」

練習……ってどーいうことだ? と、隼優は加納を訝しんだ。


加納が隼優達にアメリカ行きを打診した数日後、誠を始めとする事務所のスタッフは航空券の手配など各種手続きに追われていた。

じゃあ、宿泊に必要な物を買い揃えて来ます、と出かけようとして、ふと海里が首に手を当てた。

「あれっ、そう言えば……」

「どうした? 海里」

誠が、不思議そうに首をさすっている海里に聞く。

「それがすっかり忘れてたんだけど、昨日まで寝違えた首の左側がすげー痛かったんだ。今は何ともない……」

加納がクスッと笑う。誠はまさか――と思い、加納を見る。

「彼女の力だ。――まだ序の口だけどね」


 明歌たちは銃愛好者団体『NGA』の本部があると言うバージニア州へ来ていた。どんな街かと思いきや、これと言って強烈な個性を放つわけでもなく、いたって閑静な雰囲気の街並みだ。市民の憩いの場である公園も多い。

 ダレス国際空港へ降り立つ前、隼優はアメリカへ発つ前の加納との会話を思い出していた。

「大体、あのコミック野郎が銃規制に乗り出すと思うか?」

「誰? コミック野郎って」

明歌が隼優に聞く。加納は分かっているらしく、話を続ける。

「大統領のことかな。いろいろ問題を起こしてるけど、根はわかりやすいよね。まぁ、大統領に関しては自分の権益がリスクにさらされるとなれば、心変わりするだろうから」

 現在のアメリカの大統領はまるでマンガに出てくるような言動を繰り返していた。隼優はニュースを見るたびに――こいつ、アタマは正気なのか? と、世界の動向が不安になる。

「それに、今回の任務は挨拶程度だ。私達は製造技術については専門外だしね。技乃(ぎの)に銃について説明を聞いたが、私でもからきしわからなかったよ」

加納には後磨技乃(あとまぎの)という天才的な科学技術の知識を持つ青年がブレーンについている。

「アメリカには他にも強固な団体が存在する。この団体はまだ穏健な方なんだよ、あれでもね。隼優、君が交渉に赴くことに意味があると思って欲しい」加納は隼優に少し真剣な眼差しを向ける。

「俺が発揮できる力なんて護身術ぐらいだけどな」

隼優はこの若さで世界でもトップクラスの武術の達人だった。ただ、その能力は大会で発揮されることはほとんどなく、武術の師匠には「おまえはやる気がないのか!」といつも怒られていた。彼の力は、専らどこかの国の暴動に偶然居合わせた時や、その辺で起こるケンカの仲裁などで役に立っているようだった。

「そう思っているのは君だけだよ」

加納は、はるか先を見つめるようにつぶやいた。



to be continued……


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