【天使と少年】
思いつきネタを文にした感じです。
これはとある天使の話だ。
僕の知る君は、気づいたときにはもう隣にいるのが当たり前で、家にいるときや、当たり前だけど外にいる時も大体が空を見ている少女だった。
そんな君の夢は「空を飛ぶこと」。
その夢はこう高校に入っても変わらずに、彼女の心に存在し続けた。
ある日、僕と彼女は久しぶりに一緒に下校していた。高校に入ってからは、お互い部活が忙しくなり、ばらばらに帰ることが多くなっていた。
(ちなみに僕は美術部で、彼女は陸上部だ)その日の夕日はとても綺麗だったのを覚えている。突然その空を見つめながら前を歩いていた彼女は僕に問いかけた。「空を見るのは好き?」と。
その問いに僕は、「ああ、好きだよ。(君と見る)空はね。」と、今は言えない思いを乗せて、空を見上げながら答えた。
そのあとしばらくの沈黙の時間が流れた。だけど、その沈黙を破ったのは、僕自身だった。
「だけど、夕日は嫌いかな.....」
終わりを感じてしまうから。
「えー私は好きだよ、今日は終わっても明日がくるじゃん。」
そうだとは、僕も思う。けれど、この時間にいつか終わりが来てしまうのが怖いから、怖く感じてしまう。
そんな僕の思いを感じとってか彼女は、ふふっと笑って言った。
「空に同じなんてないんだよ。そう、私の関係にだって、同じ時間はない。いつか終わってしまうのは必然なんだよ。だからこそ、終わりを受け入れないとならないだ。」
それは知っている。だからこそ僕は一歩も踏み出せていない。
「そういえば、私の夢って覚えてる?」彼女は話をそらすように僕にまた問いかけた。
「覚えてるよ。空を飛ぶことでしょ」
「さっすが、幼馴染。」
「だけど、前から思っていたけれど、パイロットにでもなる気か?
その頭で.....」
彼女は頭が悪い。授業中も授業を聞かず空を見ているからだけど。
「いや違うよ」
それは即答だった。だけどそうするとどうやって?当たり前だが、人には鳥のような羽はない。その疑問をそのままぶつけると。
「内緒」
彼女は空を見るのをやめ、こちらを振り返り口元に人差し指を当て満面の笑顔でそういった。
僕はその笑顔でまた君に恋をする。
その思いはたとえ伝えることができないのだとしても。
それから僕はそれ以上問うのをやめた。その後家に着くまで何を会話したかはほとんど覚えてはいない。
だけど、僕は満足していた。
そして、その思いを僕は忘れないようにキャンバスに描く。
ことが思ったのはそれから1ヶ月後のことだった。その日は彼女の18歳の誕生日で、今まで見たどんな空よりも青く澄んで綺麗な空だった。
学校に行くと、1部に人だからができていて、気になって行ってみると、そこには赤く染まった君がいた。
僕は察した。彼女は命を犠牲に羽を手に入れたのだと。
今までこの美しい空を優雅に、そして自由に飛び回っているんだろうなと思い、君らしいなと思い少し笑ってしまった。伝えられなかった思いの詰まった涙を流しながら。
あの空を僕は決して忘れないだろう。
読んでくださりありがとうございます