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覚えてないと思う

まるで神話のような話だった。

それもそのはずだ。

話の始まりは縄文時代…というか人間の始まり?から説かれたのだから。

それも真顔で…笑い飛ばすこともできず、俺は黙って料理をつつくしかなかった。


「…つまり華童子とは、いにしえから国家の厄病を払い、

華之宮家のみ取り扱えるという秘薬の『延命薬』を使う、国家専任薬剤師なのでございます。

そして我が華之宮家の第一子は、秘薬の調合に必要とされるずば抜けた嗅覚を先天的に持った歴代の…いわゆる『華童子』が生まれ出でることになっているのです。

第弐〇五十代目華之宮家本家次期総当主であらせられるのが、こちらの華之宮まひる様なのでございます」


へー…。という感想しか出ない。

あまりにも身近でない言葉すぎる。一兆円と同じくらいだ。


「一般人には納得しがたいことでございましょうが、我々日本国は今やこの華之宮家に支えられているといっても過言ではありません。

なぜなら世界中の将軍から国王までが、大金をはたいて我々からその薬を買い、仲介料として国家がその金額の一部を、時の経済に投資しているのです。

今の経済の中核を担っているのは、実は我々華之宮家との仲介金なのです」


鞘さんは真面目な顔で熱く語っているが、俺にとっては大学の講義みたいで悪いが眠かった。

ちらりとまひるのほうを見ると、もうすっかりその長い睫毛まつげをうつらうつらと揺らしていた。

右手にはまだ食べかけのカニが握られている。


「華之宮家のすごさは確かに分かりました。

でも鞘さん、肝心なところを教えてもらえませんか?

なんでその華之宮家の第一子さんを、この一般人の俺が面倒見なければいけないのか」


「そうでしたね、失礼いたしました。

『華童子』のことをもう少し掘り下げましょうか。

この『華童子』というのは、男女でその能力の差があるのです」


「男のほうがすごいんですか?」


「いえ、逆です。

歴代の女性当主の調合能力は、男性当主の比ではありません。

目隠しで砂漠の中の胡椒を探り当てることくらい簡単でしょう。  


…しかし問題は、『華童子』に共通して憑く『鬼』の狂いの強さです。

……道祖土様はもうご覧になったでしょう。まひる様が『人を喰っている』のを」


言葉を失う。耳を疑う。

目の前で可愛らしくうたた寝をしている女の子を凝視してしまう。

確かに、俺は見た。あの血の海に転がる人間を。

…でも、まさか『喰っている』とは、思わなくて…。


「女性の狂いは強く現れるので、日常生活は困難になります。

一旦狂い出すと普通の人には抑えることはできません。

それを抑えるのが…道祖土様、あなたなのです」


食べていた料理の味を忘れるくらい、

話が唐突だった。

そんな能力、持ってるなんて親から聞いてないよ俺。




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