忘れてていいよ
「と、いうわけで道祖土様。
華之宮家にご協力お願い致しますね」
「どういうわけなんですか」
先程の対面から場所を移し、海岸に到着していた豪華客船に乗り込んだ。
食事でもしながらという老人の微笑に流され、
俺の目の前には豪華な海鮮料理が盛られてある。
舟盛りにはカニとタイとアワビが踊っている。
今までこんな豪華な御飯、食べたこともない。
まひると名乗った少女は、カニの足をパキパキと自分で折りながら食べている。
老人はその後ろにそっと控えて立っていて、まひるの食べ終わったカニの足を片づけていた。
「失礼、ご説明が不足でしたか。
不明瞭な点はどこでしたか?」
「いやどこっていうか…
まず華之宮家って…なんです?
それと『華童子』って…それに俺がなんでここに…」
つまり全然分からないってことしか分かってない。
食事の席に着くまでの話では、
…このまひるっていう女の子は華之宮家本家の第一御息女で、次期華之宮家代表当主。
同時に『華童子』なので、世話人が必要。
そこで俺に白羽の矢が立って、ここに来た…というめっちゃざっくりとした説明だった。
その返答に、まひるはふふと可愛らしく笑う。
「さい君はまひるのこと忘れてるのだよ。
イチから説明してあげなきゃだめだ、鞘」
そう言いながら、まひるは二匹目のカニの足を折る。
鞘と呼ばれた老人は、失礼しましたと俺に向き直り、一層笑みを深める。
「それではもう一度説明いたしましょう。
我が主、華之宮まひる様について」