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BUMP

作者: 矢光翼

一日一筆複数連題です!

お題「衝突自己」「今宵まだ今宵」「洪水」「貴方は消えて居なくなった」

 今宵、最終決戦が始まる。


 突然だった。今までの常識が反旗を翻した。

 この体、細胞に眠る幾つもの『キャラ』が、次々と、ヅキヅキと消え弾け、残るは。

 【僕】と【俺】。

 今宵僕は、決着をつける。


 始まりは小学校ぐらいだっただろうか。僕は小学校入学と共に転校してきて知り合いが一人もいなかった。若干人見知りだった僕は虚勢を張った。

「俺、遠くから来たんだ」

 その時点で、【僕】と【俺】は半分半分になった。

 それを皮切りに、口から出た虚勢は勢いを失い嘘になり、でも本当を告げることができず、場所場所で『キャラ』が違う、飽和人間になってしまった。

 さながら『キャラの洪水』言ったところで、いつしか本来の【僕】を忘れつつあった。

 それが今日、洪水は涸れ、残るは二つの水滴のみ。この川は本来【僕】だけで構成されてたのを忘れ、僕は最後の決戦を始める。


「俺はこのままでもいいと思っている」

 鏡の中の僕の口がそう言う。声は僕。でも、その正体は【俺】。

「だめだ。本来君は存在するべきじゃない」

 僕の口に合わせて鏡の中の僕の口も一緒になって動く。

「本来存在しないものを今まで存在させたのはお前だろ」

「確かにそうだ。でもそれこそが間違ってた。【僕】は僕だけのもので、【俺】じゃない」

 鏡の中の僕の顔が不機嫌になるのを僕は見た。

「じゃあ俺は、お前のために消えろっていうのか」

「...」

「お前の虚勢で生まれた俺は、お前の独断で消えるのか」

「違う」

「違くない。違くないだろ」

「違う。君が消えるわけじゃない。君も含めて【僕】にするんだ」

「今まで消えた『キャラ』達は、どうなる」

「全部、【僕】になった。消えて、還元された」

「...」

 【俺】が黙る。

 その沈黙が、衝突事故ならぬ衝突自己を引き起こすことになるのは、僕が一番分かっていた。

 【俺】を、どうにかしなければならない。普通じゃない。本来『キャラ』は一人に一つのはずだ。

 それを僕は幾つも持ってしまった。許されるはずがない。だから、こうやって僕は【俺】を説得する。

「頼む。今まで洪水に呑まれ流れ埋まってしまった【僕】が、本当の僕なんだ」

「じゃあ俺は、【俺】は、何だ?」

 静かで悲痛な叫び声。【俺】はもう、何も反論してこなかった。

「君は、【僕】だよ」

 僕の声に、もう【俺】が答えることはなかった。


 今宵まだ今宵。数時間僕は【俺】と闘っていた気がしたけれど、そんなことはなかった。

 夜の熱が冷めぬように、僕は【僕】が僕であることを痛感しながら布団にもぐる。

 貴方は消えて居なくなったが、僕は永遠に忘れない。

如何でしたか?


 簡単なことをこねくり回すのが僕の趣味みたいなものですが、今回がそれですね。

 人格なんて高尚なものじゃなく、その時折で変わるキャラ、それを一律しなければ本当の自分などない、そんな感じのことを思っていましたがどうでしょう、表現できていますかね。

 やっと一人暮らしも落ち着いてきたのでこれからはやっと本調子で書けそうです。

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