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第二話 ふわふわフワフワ

「星音ー、着たよんっ」


彩花が私の家に入ってくる。


「はーい。二階の私の部屋で待ってて」


おーけい、と言い残し彩花は二階に上がっていく。

こんな言葉が通じるのも、親友だから。


お母さんに渡されたケーキとソーダをおぼんにのせ、階段を上る。


「おまたせー、今日はガトーショコラだよ」


「マジで!?うわーありがとう星音、大好きっ」


思いっきり抱き付いてくる彩花。


うわっ、こぼれそう。

でも、でも、押しのけるわけにもいかない。


「あ、やかあ...重いいい」


重いだと?と彩花は黒い笑みを浮かべる。

・・・ヤバい。


「いやっ、なんでもないよ...」


「ふーん。ならいいんだけどね」


彩花はニッコリ笑いかけてくる。

威圧感ある笑みである。


とりあえず、セーフ?


「ねっ、彩花。勉強しよう?」


「うん。でも星音って二人きりだと性格変わるよね」


え?

そうかなあ。


「うん。ちょっと弱気っていうか」


でも、どっちの星音も好きだけどねって笑ってくれる彩花。

・・・そんなに性格変わってるかな?


「あっ、ココわかんなかったんだよね。教えて星音」


彩花が広げているのはさんす...数学の教科書。

一年生の、特の今日の数学はそんなに難しいのはなかったと思うけど。


「ココ?」


乗法の結合・交換法則。

・・・正直言って、ここでつまづく彩花はどうなんだろう。


「えーとね。25×4は...?」


初歩中の初歩。

ここが出来てないから無理なんだろう。


「えー、そんなの計算できないよ」


予想通りの答え。

筆算してもいいから...。


「筆算ね。え...と、100」


それ覚えなきゃ中学校やってけないよ?と忠告する。

でも、彩花はけらけら笑う。


「あはは!もう覚えたって」


ふーん。

そんな彩花にこんな問題を出してみる。


「2.5×8×12.5×4は?」


彩花はあごが落ちそうなほど口を開ける。

ああ、無理そうだ。


「え、ちょ...紙に書いてよ。筆算するから」


「紙に書かなくても出来ないといけないよコレは...」


彩花って数学音痴?

いや、勉強音痴か。


「そんなことない!答えは10000!」


正解と言いたいところだけれど、0が一個多い。

んー、何でこうなる。


「え、1000?何で—?」


だから、25×4は100だっていったでしょ!


「うん。だから25×4×12.5×8で...」


何かぬけてるって。

小数点...。12.5はちゃんとついてるのに。


「・・・ああ!なるへそ!」


やっと分かったみたいだ。

何という頭の悪さ...。


小学校の時何をしてたんだろうか。


「まーまー、ケーキ食べよう」


何か私が落ち着かされてるし?

どうなってるの。


ケーキを口に運びながらしゃべりだす彩花。

・・・おぎょーぎわるーい。


「そういえばさ、異世界ってどんな感じ?」


異世界は異世界だって。

RPGみたいな?


「ふーん。空想少女だねー」


空想好きは認めるけど。

空想少女って言われても嬉しくないね。


「まあ、もしも異世界に行けるなら一緒に連れてってよね」


パチン、とウィンクする彩花。

連れてくのは当たり前だよ、と言わんばかりにウィンク返しする。


「でも、どんなモンスターなんだろうね。出てくるなら」


うーん。

そんなに詳しくは考えたことなかった。


自由帳を出して、適当に絵を描いてみる。


「こんな感じ?」


もうどこかのパクリとしか思えないほどぷよぷよテュルンっなモンスター。

青くて先っぽが尖がってて。


「いたらいいよねー。絶対仲間にする」


とのりよく反応してくれるので、助かる。

しけたら悲しいし。


「こんなのは?」


丸っこくて耳がある悪魔モンスター。

・・・可愛い。


「いいね、こんなのいたら...」


勉強のことなど忘れて、自由帳に描きまくる。

グロイモンスター、可愛いモンスター、カッコいいモンスター。

キモイモンスター、怖いモンスター、普通のモンスター。


いっぱい描きまくる。

私の頭も彩花の頭も、異世界のことでいっぱい。

その夢みたいなふわふわフワフワ感覚にとらわれる。


「彩花ちゃん?もうそろそろ帰ったら?」


その声でハッと現実に引き戻される。

ドアを開けて入ってきたお母さん...夢の様なひと時を壊しやがった。


「あ、お母さん。私今日泊まっても良いですか?」


と彩花がお母さんに駆け寄る。

お母さん、私の部屋でいいから、という前に、


「良いわよ。星音の部屋に泊まってってね!」


と言い、去っていく。

喉の奥に言葉をしまったせいか、むせてしまう。


「ありゃりゃ、星音大丈夫?」


と心配して覗き込んでくる彩花。


ああ、やっぱり、行きたいよ。

二人で仲良くRPGの世界へ。

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