表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/44

俺という人間 3

家に着いた俺は鍵を開けドアノブを回した。

ガチャ!

やられた!

ドアチェーンまで掛けられていた。

呼び鈴を押してしばらくするとチェーンを外す音が聞こえたのでドアを開けた。


「あら、帰って来ないんじゃなかったの? 自分勝手で良いわね・・・」


「おかえり」の代わりに掛けられた言葉だった。

このままではいけないと思った。

自分の意見は言わねばならない。

そう思った俺は居間に座ると洋子を呼んだ。


「あのね、急に予定が入ったのは悪いと思ってるけど、カラオケだって仕事の一環なんだよね。だからああいう態度は良くないと思うよ。それに月に一回位のペースなんだから、大目に見てくれないかなぁ?」


「何が仕事の一環よ!遊んでるだけじゃないの!」


俺は単なる遊びじゃないと、先に述べた三つの理由を説明した。


「私には仕事の一環なんて全く分からない! 偉そうに口実を作ってるけど結局は遊んでるだけでしょ! こっちはメシ作って待ってんだよ! 私は接待の多いサラリーマンと結婚したわけじゃない!!」


何だか疲れてしまった・・・。

俺は話しを打ち切り夕飯を食べ始めた。

この日から三日間、会話も食事も無かった。


四日目に改めて話しを聞いた。

どうやら洋子が言わんとしている事は「当日の急な誘いは食事を作って待っている者からすると迷惑だ」との事らしい。

俺の職場は学生の長期休日を狙って「春」「夏」「年末か年始」と、年に三回だけ夜通しで宴会を開いていた。

それ以外の誘いは全て当日だ。

その全てを断り続ける日々が続いた。

ある時は今は遠方に住んでいる元バイトが、俺とカラオケに行きたいが為にわざわざ二時間も掛けてきてくれたのに、当日の誘いだった為に断らざるを得なかった。


その内に誰からも誘われなくなった。

直属の部下は毎日の様にバイトや上司とカラオケに行っていた。

きっと被害妄想だと思うが職場で孤立している様に感じられた。

俺は年に三回の宴会しか交流の場がなくなってしまった。

ちなみに洋子は月に一回程度の割合で、食事会だか何だかをしていた。


『当日の誘いが無理なら予定を立てて』とか、『もっと強く言っておけば』など今も当時も浮かんではいたが、出来るだけ波風は立てなくなかった。

それに正当な理由を出したにしても、また理由をつけては怒鳴られそうでイヤだった。

俺は平穏無事に過ごしたかった。


しかしもっと言い合えば良かったと思う。

一つ一つの問題に対して、どちらも歩み寄る様な結論を出していけば良かったと思う。

ただ洋子は自分の意見を曲げないタイプであり、俺は争いを避けたいタイプだったので、話し合いが始まっても俺が途中で折れるのがパターンだった。

でもそれは良くない事だった。

空気を入れて膨らませる風船でさえも、入れ続ければ破裂するものだ。

こうした新婚生活の中、「あの事件」が起きるのだった。


結婚して二ヶ月くらい経った頃、ある事件が起きた。

俺は「風呂事件」と呼んでいる。

我が家にはお風呂に入る優先順位はないが、帰宅の遅い俺の方が後に入る事が多い。

ただ週に二回位は先に入る。

そんな時に「風呂事件」は起きた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ