俺という人間 1
新婚旅行の三日目の夜
結婚してから五日目の夜である。
俺は洋子の布団へと潜り込んだ。
あからさまに洋子は嫌な顔をした。
「何でそんな顔するの?」
「だって・・・また、するんでしょ?」
俺は初夜から毎晩、洋子を抱いていた。
「うん、ダメなの?今日は疲れちゃった?」
「ダメじゃなくてイヤなの」
「何で?」
「だって痛いんだもん」
申し訳ないが男には分からないし俺は自分勝手だったかもしれない。
でも付き合ってから八年も我慢をしてきたのだから、病み付きになってしまうのも当然だと正当化する自分もいた。
だから俺は食い下がった。
「俺には痛みは分からないけど、数をこなさないとダメなのも確かじゃない?それに新婚なら尚更に毎晩の様にするものだと思うけどなぁ・・・」
自己防衛かもしれないが、至って一般的な意見だったと思う。
ただその次の洋子の発言というか激しい態度に、俺は自分が萎縮していくのが分かった。
「あぁ~!新婚なら毎晩の様にって誰が決めたんだよ!ふざけんじゃねぇよ!」
今までにも洋子の激しい態度は見た事があるがここまでではなかったし、大抵そういう時は完全に俺に非がある時だった。
(この人にも自分の意見を言えないのかもしれない・・・本当の自分を見せてはいけないのかもしれない・・・)
この時に感じた気持ちは洋子と過ごしていく日々の中で、あながち間違ってはいなかったと思い知らされていく事となった。
そしてこの一件以来、洋子に対しての性欲は
完全に消え去り、夫婦の営みは月に一回となった。
普通の人からすれば「そのくらい大した事じゃないよ」と思う事かもしれないが、俺の中では大きな痛みとなって残ったのだ。
そして「あの事件」が起きる。
あっ!「あの事件」の前にも忘れられない出来事があったんだ。
先ずはそれから話します。