福田洋子(ふくだようこ) 4
俺は一年を振り返ってみた。
やはり友と呼べる友はいなかった。
もちろん付き合いはあるがそれは学校生活の中だけであって、プライベートとなると皆無だった。
俺自身が選んだ道でもあるが、環境にも多少なりの問題があった。
やはり一番仲良かったのは何と言っても部活の仲間だ。
ただ一年の男子部員は全員で六人だったが、俺以外は同じ中学校の出身だった。
尚且つ学校を中心に住んでる場所も全く真逆だった為に、ワイワイと帰る皆と別で、一人で帰らねばならなかった。
プライベートで会うにしても自転車で四十分は掛かるし、友達の家は駅からも遠かったので、なおさら会う機会は無かったのだ。
俺は学校では明るく振舞うが、家では笑顔を見せない人間になっていった。
寂しいと感じた事もあるが構わなかった。
親しくなれば当然に粕谷みたいな事になってしまう。
それだけは避けなければいけなかった。
さらにこの頃に気付いた事なのだが、人と話すのが苦手だと分かった。
それは「本当の自分を見せたくない」という思いよりも、人と話すのが怖かったのだ。
俺の姉も母も気が強い。
小さい頃は自分が正論を言っても、直ぐに何倍も反論されたので、誰に対しても何も言えなくなっていた。
だから『本当の自分を見せたくない』と思ったのも、『言いたい事が言えない』という所から来ているのかもしれなかった。
(もし恋人が出来たら、その人の前だけでは素直な自分でいよう)
そう思いながら一年生は終わっていった。