心の変化 14
始業式の日
クラス替えの発表があった。
担任は新任の深沢先生という男性だった。
このクラスで仲間が多く出来た。
麻生、ゲゲ、はんぺん、平野、まっちゃん、
たっちゃん、大野、柴ちゃん、まさ・・・後は出てこないかな・・・。
そして好きな人も出来た。
吉田美恵と小林君江。
三年の頃に仲良かった利恵ちゃんは席替えと同時に疎遠になっていた。
吉田は俺から気に入ったが君江ちゃんは向こうからアプローチがあり、気になる存在へと変わっていった。
しかし特に進展は無かった。
俺が五~六年生の時は漫画の『キャプテン翼』が流行っていた。
それと同時に初期のファミコンが発売されたのもこの頃だ。
その為に休み時間はサッカー、放課後はやはりサッカーかファミコンをやっていた。
凄く楽しい時期だった。
しかし家庭では急展開があった。
あれは五年の時だったかな・・・。
俺は団地の隣の空き地で友達と珍しく野球をしていた。
その時、空き地の前の道を父が通った。
俺は当然、声を掛けた。
「どこ行くの?」
「諭・・・お父さんはもう帰ってこないからね・・・」
「何で?」
「お父さんとお母さんは仲が悪いでしょ? だから別々に暮らす事にしたんだ・・・」
「もう会えないわけじゃないんでしょ?」
「うん」
「そっか! なら仕方ないね。分かった」
「じゃぁね」
父は寂しそうに去って行った。
実際に家庭の中はグチャグチャだった。
父と母は顔を見合わせる度に激しくケンカをしていた。
そんな両親を見ながら(そんなにケンカをするなら別々に暮らせば良いのに・・・)と常々冷めた感情を抱いていた俺は、父が去っていく姿を見ても心は痛まなかった。
幼稚園の頃に母の姿が見えなくなって大泣きしたのが夢かと思える程の親不孝な子供だ。
(しかし今はあの時以上に親不孝だな)
そんな家庭の事情を「よくある話し」と受け止め時は過ぎ、六年生の夏休みになった。