欲張りなかぐや姫
女は、銀河治安監察局(GSO)から逃げていた。
今回捕まれば、しばらく刑務所から出てこられない。
中央から離れ、辺境の星にでもなりを潜めていよう。
そうして女は、地球へたどり着いたのだった。
竹取の翁ことおじいさんは、ある日光る竹を見つけた。
切ってみると、中に小さな女の子がいる。
おじいさんは、家に連れて帰り、おばあさんと一緒にその子を大切に育てた。
その日以来、おじいさんが竹を切ると、金が入っており、おじいさんの家はたちまち裕福になった。
女の子は、三か月ほどで大きくなり、輝くばかりの美しい女性となった。
「なよ竹のかぐや姫」と名づけられた。
かぐや姫となった女は、笑いが止まらない。
擬態で小さくなり、自分の痕跡を追跡しにくくした。
今まで手に入れた財宝も竹の中に隠したが、おじいさんが家に持ち帰ってくれた。
保管の手間が省けた。
三か月ほどで、本来の姿に戻ったが、監察局に気づかれてはいないようだ。
このまましばらくこの星に隠れていよう。
やがてかぐや姫の美しさが噂となり、次々と求婚者が現れた。
かぐや姫は、結婚の条件として、自分が告げる宝物を持ってきた人と結婚すると言った。
石作皇子には、仏の御石の鉢を要求した。
これは異彩を放つ輝きを持つという。
輝いているなら、何か貴石でできているものかもしれない。
期待したが、偽物だった。
こんな汚い真っ黒な鉢、いらないわよ。
庫持の皇子は、蓬莱の玉の枝。
銀の根、金の実、真珠の葉を持つ枝らしい。
いいわねぇ、こういうのじゃなくちゃ。
どうやら職人に作らせた偽物みたいだけど、いいのよ、
金銀、真珠が本物なら。
なんて思っていたら、賃金未払の職人たちがやってきて、偽物と暴露しちゃった。
騒ぎに紛れて、偽物の蓬莱の玉の枝もどこかへいってしまった。
がっかりだわ。
阿部御主人には、火鼠の皮衣を頼んだんだっけ。
どうせなら銀狐のコートなんかの方がいいけど、誰か商人にでも転売すればいいわね。
残念だけど、これも偽物だったわ。
燃えちゃって一文にもなりゃしない。
大伴御行は、竜の首の玉。
五色に輝く宝玉ですって。
これは期待しちゃうわ。
なのにこれも失敗。
石上麻呂足は、燕の子安貝。
安産のお守りとなる貝らしいけど、私はいらないわ。
これも転売すればいいかな。
と思っていたら、またも失敗したようね。
なかなか手に入らない宝物と聞いたから、頼んだけれど、誰も何も持ち帰れないなんてね。
ちょっとだけ成果があったのは、帝と縁をつなげたこと。
結婚は束縛されるから断ったけど、このまま仲良く文通しているうちに、
宝物殿の宝物の一つでももらえるかもしれない。
何事もなく数年が過ぎた。
まだ帝から宝物はもらえない。
昔の仲間がある日情報を持って、こっそりやってきた。
どうやら監察局がここを突き止めたらしい。
宇宙船で逃がしてくれるという。
もちろん有料で。
そろそろ潮時かなと思い、宇宙船に同乗させてもらうことにした。
一応育ててくれたし、向こうは知らないが、かくまってもらったわけだし、
黙って消えるのも悪いと、おじいさん、おばあさんには別れを言おう。
「じつは、私はこの国の人間ではなく、月の世界の住人なのです。
もうじき迎えが来て、帰らなければなりません。」
ウソ泣きだけど、言ってることは嘘じゃない。
お迎えが、自分の仲間か、監察局かは大問題だけどね。
言わなければよかったかなぁと思ったのは、帝が私を引き留めようと
武士を派遣し、警護したことだ。
まぁでも仲間がパラライザーで、身動きできないようにしたから問題なし。
おじいさん、おばあさんにお礼を言って、宇宙船に乗り込んだ。
監察局には、窃盗や結婚詐欺などの罪で手配されているけど、まだまだ捕まらないわよ。
次の星では、もっといいカモを捕まえるわ。
地上の人々は、かぐや姫が月へと帰って行くのをただ見送っていた。




