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昔話シリーズ

欲張りなかぐや姫

作者: 山田裕子
掲載日:2026/08/01

女は、銀河治安監察局(GSO)から逃げていた。

今回捕まれば、しばらく刑務所から出てこられない。

中央から離れ、辺境の星にでもなりを潜めていよう。

そうして女は、地球へたどり着いたのだった。


竹取の翁ことおじいさんは、ある日光る竹を見つけた。

切ってみると、中に小さな女の子がいる。

おじいさんは、家に連れて帰り、おばあさんと一緒にその子を大切に育てた。

その日以来、おじいさんが竹を切ると、金が入っており、おじいさんの家はたちまち裕福になった。

女の子は、三か月ほどで大きくなり、輝くばかりの美しい女性となった。

「なよ竹のかぐや姫」と名づけられた。


かぐや姫となった女は、笑いが止まらない。

擬態で小さくなり、自分の痕跡を追跡しにくくした。

今まで手に入れた財宝も竹の中に隠したが、おじいさんが家に持ち帰ってくれた。

保管の手間が省けた。

三か月ほどで、本来の姿に戻ったが、監察局に気づかれてはいないようだ。

このまましばらくこの星に隠れていよう。


やがてかぐや姫の美しさが噂となり、次々と求婚者が現れた。

かぐや姫は、結婚の条件として、自分が告げる宝物を持ってきた人と結婚すると言った。


石作皇子には、仏の御石の鉢を要求した。

これは異彩を放つ輝きを持つという。

輝いているなら、何か貴石でできているものかもしれない。

期待したが、偽物だった。

こんな汚い真っ黒な鉢、いらないわよ。


庫持の皇子は、蓬莱の玉の枝。

銀の根、金の実、真珠の葉を持つ枝らしい。

いいわねぇ、こういうのじゃなくちゃ。

どうやら職人に作らせた偽物みたいだけど、いいのよ、

金銀、真珠が本物なら。

なんて思っていたら、賃金未払の職人たちがやってきて、偽物と暴露しちゃった。

騒ぎに紛れて、偽物の蓬莱の玉の枝もどこかへいってしまった。

がっかりだわ。


阿部御主人には、火鼠の皮衣を頼んだんだっけ。

どうせなら銀狐のコートなんかの方がいいけど、誰か商人にでも転売すればいいわね。

残念だけど、これも偽物だったわ。

燃えちゃって一文にもなりゃしない。


大伴御行は、竜の首の玉。

五色に輝く宝玉ですって。

これは期待しちゃうわ。

なのにこれも失敗。


石上麻呂足は、燕の子安貝。

安産のお守りとなる貝らしいけど、私はいらないわ。

これも転売すればいいかな。

と思っていたら、またも失敗したようね。


なかなか手に入らない宝物と聞いたから、頼んだけれど、誰も何も持ち帰れないなんてね。

ちょっとだけ成果があったのは、帝と縁をつなげたこと。

結婚は束縛されるから断ったけど、このまま仲良く文通しているうちに、

宝物殿の宝物の一つでももらえるかもしれない。


何事もなく数年が過ぎた。

まだ帝から宝物はもらえない。

昔の仲間がある日情報を持って、こっそりやってきた。

どうやら監察局がここを突き止めたらしい。

宇宙船で逃がしてくれるという。

もちろん有料で。

そろそろ潮時かなと思い、宇宙船に同乗させてもらうことにした。


一応育ててくれたし、向こうは知らないが、かくまってもらったわけだし、

黙って消えるのも悪いと、おじいさん、おばあさんには別れを言おう。


「じつは、私はこの国の人間ではなく、月の世界の住人なのです。

もうじき迎えが来て、帰らなければなりません。」


ウソ泣きだけど、言ってることは嘘じゃない。

お迎えが、自分の仲間か、監察局かは大問題だけどね。


言わなければよかったかなぁと思ったのは、帝が私を引き留めようと

武士を派遣し、警護したことだ。

まぁでも仲間がパラライザーで、身動きできないようにしたから問題なし。

おじいさん、おばあさんにお礼を言って、宇宙船に乗り込んだ。

監察局には、窃盗や結婚詐欺などの罪で手配されているけど、まだまだ捕まらないわよ。

次の星では、もっといいカモを捕まえるわ。


地上の人々は、かぐや姫が月へと帰って行くのをただ見送っていた。

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