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初雪と括弧  作者: seolremdal
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第9話(チョン・ウジン視点):九十分間の有罪

同じ九十分でも、

立っている側と、

見上げられている側では、

意味が違う。

これは、

沈黙を選んだ男の側の記録です。



「始めてください。」


短い宣言とともに、


教室はすぐに静寂へと沈んだ。


無数のペン先が紙を擦る音だけが、


空気を満たしている。


試験監督として教室を一周する私の足は、


磁石に引き寄せられるように、


自然と窓際の一席の前で止まった。


イ・ジウ。


解答用紙を埋めていく彼女の後ろ姿を見つめながら、


私はそこに根を張ったかのように動けなくなった。


ブラウスの袖からのぞく細い手首が、


わずかに震えるたび、


私の内側の何かも、静かに揺れた。


他の学生を見なければならないという理性は、


とうに麻痺していた。


九十分。


誰かにとっては苦痛な試験時間だっただろう。


だが私にとっては、


彼女を最も近い距離で、


そして最も正当な理由のもとに


見つめていられる時間だった。


彼女の肩越しに落ちる私の影が、


解答用紙を覆うたび、


奇妙な所有欲と、


同時に鋭い罪悪感を覚えた。


文章を紡ぐ速さ。


息を整えるリズム。


空気の中にわずかに残る体温の気配。


そのすべてが、


私の神経のどこかに、


深く刻み込まれていくようだった。


――午後八時、研究室。


採点を終えた答案の束の上に、


彼女の名前がはっきりと浮かび上がる。


100点。


誤字ひとつない論理。


乾いているのに、


人を揺さぶる独特の文体。


彼女は、実力でも


私を完璧に打ちのめしていた。


私は大学のポータル掲示板を開いた。


成績を公示しながら、


どうしても口にできなかった本心を、


「括弧」という


卑怯で、そして必死な隠れ場所の奥に


忍ばせることにした。


満点者:キム〇ホ、イ・ジウ


(※ちなみに、小学生のころ私が片思いしていた人と同じ名前です)


入力を終えた指が、


しばらく動かなかった。


数百人の学生が目にする告知に、


これほど私的な一文を残すことが


どれほど無謀か、


理解していないわけではない。


それでも――


そうでもしなければ、


九十分間、彼女のそばを離れなかったこの想いが、


壊れてしまいそうだった。


窓の外では、


白い欠片が静かに舞い降りている。


今冬の初雪だった。


私は告知の最後に、


もう一文を添えた。


「今、外では初雪が降っています。


少しだけ外に出て、雪に触れてみるのもいいかもしれません。」


この雪を浴びながら、


彼女が顔を上げてくれればいい。


そしてあの括弧の中の一文が、


私だけが送った


密やかな合図だと


気づいてくれればいい。


あの日、私は――


返事が来ない可能性まで引き受けながら、


ただ、


切実に願っていた。



告白は、

必ずしも言葉の形をしているとは限らない。

括弧に隠した一文も、

雪に紛れたひと言も、

すべては“触れてはいけない距離”の中で

必死に選んだ方法だった。

有罪だと分かっていても、

止まれなかった九十分。

彼は、

まだ自分がどこまで踏み込んでいるのか、

正確には知らない。

物語は、

ここから静かに傾き始めます。

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