表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初雪と括弧  作者: seolremdal
6/31

第6話 : 90分の静寂、そして影

沈黙が続く時間ほど、

人の本音は隠しきれなくなるのかもしれません。

九十分という、

本来はただの試験時間。

けれどその場にあったのは、

問題用紙よりも重たい“視線”でした。


期末試験当日の教室は、


いつもより冷たく、重かった。


机の上には、


筆記用具と白い解答用紙だけ。


学生たちの緊張を含んだ呼吸が、


低い天井にぶつかって、静かに散っていった。


「始めてください。」


チョン・ウジン教授の短い一言とともに、


試験用紙が裏返された。


あちこちで、


ペン先が紙を擦る、


かすかな音が続く。


私もまた、


ダブルメジャー進入への最後の関門だと思い、


息を整え、


ゆっくりと解答を書き進めた。


そのときだった。


試験監督のために


教室を歩いていた彼の足音が、


私の机の横で、止まった。


最初は、


気にしないようにした。


監督とは、


そういうものだから。


けれど――


十分が過ぎ、


三十分が過ぎても、


彼の足音は


再び聞こえなかった。


顔を上げなくても、分かった。


私の肩越しに、


濃い影が、


解答用紙の上に落ちていた。


無意識に、


手に力が入る。


ペン先が紙に触れる感覚が、


やけに鮮明になった。


心臓が大きく鳴りすぎて、


手の甲の血管まで震えている気がした。


別の席から、


学生が質問をした。


教授は、


一瞬だけその場を離れた。


私はようやく、


少しだけ息をついた。


けれど、


説明が終わるよりも早く、


彼の影は


再び私の席へ戻ってきた。


まるで、


そこが本来の位置であるかのように。


九十分という時間は、


異様なほど長かった。


すぐ隣から伝わる


重い存在感と、


低く聞こえる呼吸のせいで、


一文を書くたびに、


意識がどこかへ散っていった。


おかしい、と


思った。


監督なら、


このあたりで


別の場所へ移動するはずだった。


けれど彼は、


最後まで、


そこにいた。


試験終了を告げるチャイムが鳴るまで、


彼は一度も、


私の机から


離れなかった。


解答用紙を提出し、


席を立ったとき、


私は一瞬、足を止めた。


彼の影が、


まだ


完全には消えていない気がして。


気のせいだと、


自分に言い聞かせようとしたけれど、


あの九十分が、


試験ではなく、


何かの“確認”だったのではないかという感覚は、


簡単には消えなかった。





読んでくださり、ありがとうございます。

触れていないのに、 なぜか近づいてしまう距離があります。

九十分のあいだ、 動かなかったのは、 足ではなく――

理性だったのかもしれません。

物語は、まだ揺れ続けます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ