第31話(最終回):次の季節へ
春だった。
キャンパスに
桜が咲き始めていた。
私は
新しい学期の時間割を持って
坂道を上っていた。
二重専攻は終わった。
チョン・ウジン教授の授業も、
英文学の教授の授業も、
もう私の時間割にはない。
足取りは
思っていたより
軽かった。
鞄の中で
指先に
懐かしい感触が触れた。
黄色い包み紙。
ノンシュガーの
レモン味のリコラ。
いつ入れたのかもわからないまま
鞄の隅に
残っていた。
私は
歩きながら
ゆっくりと
包みをほどいた。
口に入れた。
最初は
少し酸っぱかった。
それから
ゆっくり
甘くなった。
坂の上で
風が吹いた。
桜の花びらが
いくつか
肩の上に落ちて
また
散っていった。
私は
振り返らなかった。
振り返る必要は
なかった。
そこにあったものは
もう
私の中に
十分残っているから。
レモンの香りが
口の中で
ゆっくり
溶けていった。
私は
坂を上りきり
新しい季節の中へ
歩いていった。
あとがき
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
約二か月のあいだ、この小さな物語を書くことができて
私自身とても幸せでした。
静かな教室や、すれ違う視線、
言葉にできなかった気持ちを
読者の皆さまと一緒に見守ることができたような気がします。
あの二人の男性が、
どこかで幸せに過ごしていることを
心から祈っています。
そして、
この物語を読んでくださった皆さまの心にも
小さな余韻が残ってくれたら嬉しいです。
本当にありがとうございました。
もしよろしければ、
同じ世界を舞台にした
新しい物語も準備しています。
タイトルは
「あなたの物語を、私はずっと愛していた」。
この物語を愛してくれた誰かが、
また別の場所で
その物語の続きを見つけるかもしれません。
どこかでまたお会いできたら嬉しいです。




