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初雪と括弧  作者: seolremdal
3/31

第3話 : 12月の予告状

第3話です。

触れていないはずなのに、

なぜか鼓動だけが近づいてくる瞬間があります。

ほんの数秒。

それだけで、

世界の温度が変わることもある。

十二月の、静かな予告です。


クリスマスを控えた授業だった。


教室の窓に、冷たい空気がうっすらとにじみ、


人々はなんとなく襟元を押さえながら、


年末の話題を口にし始めていた日だった。


チョン・ウジン教授は、


いつもより少しゆっくりとした声で、


テキストの説明をしていた。


「この場面で大切なのは――


主人公が何を選んだか、ではありません。


最後まで、何を言わなかったかです。」


私はうなずきながら、ノートを取っていた。


そのときだった。


ペンが指先から滑り、


小さな音を立てて、机の端を越え、


床へころころと転がった。


身をかがめようとして、止まった。


彼が、もう動いていたからだ。


いつ降りてきたのかも分からないまま、


教授は私の前に立っていて、


何も言わずに、床に落ちたペンを拾い上げた。


そして――


とても慎重に、


まるで音さえ立てたくないかのように、


私の机の上に、そっと置いた。


彼の手がペンから離れる、その瞬間まで、


私は息をするのを忘れていた。


「ありがとうございます……」


小さく言ったけれど、


彼はすでにうなずきながら、


背を向けていた。


再び教壇に上がった彼は、


何事もなかったかのように、


説明を続けた。


しばらくして、


話を終えながら、彼が言った。


「そういえば――


みなさん、クリスマスの予定はありますか?」


あちこちから、笑いが起きた。


「私は今年も、一人で過ごすことになりそうです。」


冗談めいた口調。


軽い表情。


それなのに、


その言葉が、


どうしてあんなにも遅れて届いたように感じたのか。


「まさか。」


「教授、それはないですよ。」


学生たちの反応が続いたけれど、


私は、さっきの彼の手を思い出していた。


黙ってペンを拾い、


机の上に置いていった、あの手。


「本当ですよ。」


彼は笑って言った。


「彼女はいません。


年末は、いつも一人です。」


彼の視線が、


教室を一周する。


そして――


ほんの一瞬、


私の席の近くで、留まった。


スジンが、机の下で私の腕をつついた。


「ねえ……」


囁くように言った。


「今、見た?」


私は顔を上げなかった。


机の上に置かれた、自分のペンだけを、


じっと見ていた。


何も起こらなかった授業だった。


それなのに、


なぜか分かる気がした。


彼は言葉より先に、


すでに一度、


私の方へ動いていたのだと。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

何も言わずに差し出された手。

たったそれだけで、

心が落ちる音を、

私は確かに聞きました。

あの瞬間、

動いたのは彼だったのか、

それとも――

私のほうだったのか。

物語は、まだ始まったばかりです。

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