第27話:いつでも (Side 英文学教授)
最後の授業が終わった日だった。
学生たちが
一人、また一人と
教室を出ていく。
その中で
ジウは
ゆっくりと鞄をまとめて
席を立った。
私は
教壇の上から
その様子を見ていた。
今学期が終われば
ジウは二重専攻を終え、
もう私の授業を取ることはない。
そのことを
私は
ずっと前から
知っていた。
「先生、
一学期間ありがとうございました。」
ジウが
軽く頭を下げた。
私は
「お疲れさま」とか
「こちらこそ」とか
そんな言葉を
言うべきだった。
でも
一瞬
言葉が出なかった。
窓の外から
長い午後の光が
差し込んでいた。
その光の中に
ジウの横顔があった。
「ジウさん。」
自分でもわかるくらい
声が
少し低かった。
ジウが
顔を上げる。
私は
その目を
まっすぐ見ることができなかった。
「いつでも——」
言葉を選ぶのに
一秒ほどかかった。
「リコラのキャンディが
欲しくなったときは
連絡してください。
喜んで
買ってきます。」
ジウが
少しだけ
立ち止まった。
その沈黙は
長くはなかったけれど
私は
その中にあるものを
全部
感じ取ってしまった。
「はい。」
ジウが
静かに言った。
「ありがとうございます、先生。」
私は
その言葉を最後まで聞く前に
視線を窓の外へ向けた。
これ以上
聞いてはいけない気がした。
ジウの足音が
廊下の向こうへ
遠ざかっていく。
私は
しばらくの間
窓の外を見ていた。
午後の光が
ゆっくりと
傾いていた。
ポケットから
リコラを一粒取り出した。
レモン味。
包みは開けずに
手のひらの中で
しばらく転がす。
「いつでも」と
言ったけれど
その連絡が
来ないかもしれないことも
わかっていた。
それでも
よかった。
もう
十分なくらい
近くにいたのだから。




