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初雪と括弧  作者: seolremdal
20/31

第20話:行間を読む人


ダブルメジャーの授業がある日だった。

私が唯一、少しだけ気を緩めてもいい時間。


深く息を吸った。

吸い込み、ゆっくり吐き出す。

そしてペンを握った。


教授が教壇に立つ。

出席簿をめくる音が静かに響いた。

名前が一つずつ呼ばれていく。


「イ・ジウ。」


その瞬間、

私はぼんやりしていた。

自分の名前が通り過ぎたことにも気づかずに。


短い沈黙。


顔を上げたとき、

教授が私を見ていた。


私は遅れて口を開いた。

「はい。」


すでに出席簿にはチェックが入っていた。


彼は何も言わなかった。

ただ、軽くうなずいた。

大丈夫だというように。


その小さな仕草ひとつで、

胸が少し落ち着いた。


授業は続いた。


説明が長くなるにつれ、

私の集中は何度もほどけた。


黒板の文字がぼやけ、

また鮮明になる。


そのたびに、

教授の説明はわずかにゆっくりになった。

ある文章はもう一度言い換えられ、

ある部分には例がひとつ増えた。


彼が

私を見ていることに気づいた。


あからさまではなく、

流れるように。


監視ではなく、

見守り。


その視線は、

不思議と私を焦らせなかった。


むしろ、

大丈夫だと告げているようだった。


「今学期の課題は、少し形を変えましょう。」


教授がチョークを持つ。


シェイクスピア。

パート番号。

分量。


学生たちの間から小さなため息が漏れる。


「え、量が……」


私は静かに書き取った。

分量はかなり多い。

簡単ではないはずだった。


それなのに、

心はなぜか乱れなかった。


説明は具体的で、

方向は明確だった。


何を読み、

どこを分析し、

どの観点で書くのか。


思考が散らばる隙がないほど、

緻密だった。


授業が終わっても、

彼は私を呼び止めなかった。

大丈夫かとも聞かなかった。


それが、むしろよかった。


私は鞄をまとめながら、

静かに息を吐いた。


その日の午後、

図書館の隅の席でテキストを開いた。


文章は長く、

コンマが多く、

括弧の中にさらに別の文が潜んでいる。


読んで、

線を引き、

また読む。


一行を二度、三度とたどった。


間違えないためではなく、

ただその中にいたかった。


文章が長くなるほど、

私の思考は短くなった。


どれくらい時間が過ぎただろう。


顔を上げたとき、

窓の外はすでに暗くなっていた。


そのとき、気づいた。


何時間ものあいだ、

一度も

あの名前を思い出していなかったことに。


私はもう一度ページをめくった。


その日は、

少しだけ

痛みが薄かった。

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