第17話:揺れた距離
サバイバルゲームが終わったあとも、
興奮はなかなか収まらなかった。
誰かがさっきの場面を真似し、
誰かが私の肩を軽く叩いて笑う。
「本当にかっこよかったよ。」
「完全に逆転だったよね。」
私はぎこちなく笑い、首を振った。
ポケットに手を入れかけて、
なぜかやめて、
代わりに手袋をいじった。
さっき触れた手のひらが、
妙に鮮明だった。
夕食の準備が始まる。
鉄板の上で肉が焼ける音。
缶を開ける軽快な音。
煙がゆっくり空気に広がる。
私は、
席を決められないまま、
少し離れて立っていた。
そのとき。
「MT……思ったより楽しいですね。」
低い声。
顔を上げると、
チョン・ウジン教授がすぐ隣に立っていた。
いつ近づいたのか分からない。
「はい。思ったより。」
私は笑った。
彼は鉄板をちらりと見て言った。
「さきほどは……正直、驚きました。」
「私ですか?」
「ええ。」
彼は一瞬言葉を止め、続けた。
「思っていたより……ずっと大胆ですね。」
その言葉が
褒め言葉なのか、
それとも別の意味を含んでいるのか、
うまく判断できなかった。
そのとき。
「ジウさん!」
リーダーが焼きたての肉を一切れ、
私の皿にぽんと置いた。
「これ、今ちょうどいい焼き加減です。」
そして笑いながら言った。
「今日のヒーローは動かないでください。
料理は俺が全部やります。」
周囲から笑い声が上がる。
私は照れくさくなって、
「いえ、私もできますけど――」
と言いかけて、言葉を濁した。
リーダーはすでに肉を裏返している。
その短いあいだに、
私は気づいた。
チョン・ウジン教授が
何も言っていないことに。
彼の視線が、
鉄板を越えて、
一瞬、リーダーの手に止まった。
そして、
ゆっくりと私へ移る。
静かだった。
静かなのに、
どこか熱を帯びていた。
「たくさん食べてください。」
彼はそれだけ言った。
いつもより、少し低い声で。
食事のあと、
簡単なゲームが続いた。
笑い声と罰ゲーム、
にぎやかな拍手。
私はその中に溶け込んでいたが、
どこかでずっと意識していた。
彼の存在を。
離れていても分かった。
何度か、視線がかすめる。
そのたびに、
私はわざと別の方向を見た。
なぜか、
目を合わせてはいけない気がした。
夜がさらに深まったころ、
司会者が前に出た。
「さあ、マニト発表です!」
歓声が上がる。
名前が一つずつ呼ばれていく。
「〇〇のマニトは――〇〇!」
笑いとため息が交互に起こる。
そして――
「チョン・ウジン教授のマニトは――」
一瞬の間。
教授は平然と立っていた。
「さて……さっき肉をくれた学生ですか?」
冗談めいた答え。
笑いが起きる。
「残念!違います!」
司会者が声を張る。
「正解は――イ・ジウさんです!」
その瞬間、
空気が一拍止まった。
私は立ち上がった。
「私です。」
笑おうとしたが、
心臓が速すぎた。
チョン・ウジン教授の顔が、
ゆっくりとこちらを向く。
予想していなかった人の表情だった。
戸惑い。
短い驚き。
そして――複雑な光。
彼はしばらく言葉を失った。
「気づきませんでした。」
低く笑う。
だがその笑みは、
完全に軽くはなかった。
「なかなか……誠実なマニトでしたね。」
私は何も言えず、
うつむいた。
周囲はまだ騒がしかったが、
その瞬間だけは、
不思議と
二人だけが残されたようだった。
そして私は気づいた。
今日一日で縮まったと思っていた距離が、
実は――
もっと複雑に、
揺れているのだと。




