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初雪と括弧  作者: seolremdal
14/31

第14話:すれ違う軌跡

偶然は、

ときどき不自然なくらい正確に

人を同じ場所へ導く。

離れているはずなのに、

なぜか感覚だけが近づいていく時間。

この春のMTで、

彼女はひとつの名前を引き当てます。

それが、ただの偶然だったのかどうかは――

まだ誰にもわかりません。


国文学科の春のMTが始まった。

キャンパスを離れたバスが山道へ入ると、

窓の外の景色は次第に濃い緑へと変わっていった。

学生たちの笑い声。

お菓子の袋がかさりと鳴る音。

エンジンの低い振動。

私は窓側の席に座っていた。

チョン・ウジン教授は一番前の席、

助手と並んで。

物理的には、遠い。

それなのに――

なぜか彼の存在は、はっきりしていた。

前方で誰かが笑うたび、

それとは質の違う、低く整った声が

かすかに耳に届く。

窓の外を見ているのに、

聴覚だけが、何度も前へ向かう。

バスがカーブを曲がるたび、

空気がふわりと揺れた。

そのたびに、

どこか覚えのある香りが

後ろへ流れてきた。

確信はなかった。

けれど、

なぜか呼吸が浅くなる。

見なくても、

同じ空間にいるというだけで、

神経が敏感になる。

まるで――

目に見えない細い線が、

前の席と私の席を

つないでいるかのように。

助手の声が響いた。

「今回のMTではマニトをやります。

今夜発表するまでは、正体は絶対に内緒ですよ。」

学生たちが笑いながら、

箱の中から紙を引いていく。

私の番が来た。

手を入れた瞬間、

なぜか心臓が先に反応した。

嫌な予感、というより

妙な予感。

折りたたまれた紙を開く。

三文字。

チョン・ウジン。

その瞬間、

耳が遠くなった。

さっきまで鮮明だった音が、

水の中へ沈んだようにぼやける。

どうして。

どうしてよりによって。

何十人もいる中で、

なぜ私の手に

その名前が来たのだろう。

偶然にしては、

あまりに正確だった。

前方で、助手の言葉に

短く笑う声が聞こえた。

彼の笑いだった。

さっきより、

はっきりと。

私は紙を折り直した。

指先が、わずかに震える。

今日一日、

私は彼をこっそり気にかけなければならない。

気づかれないように。

近づく理由が、

公式に与えられたという事実が、

胸を強く打った。

前の席で、

誰かが体を動かした。

肩がほんの少し傾く。

偶然かもしれない。

けれど、

その小さな動きひとつに、

息が詰まりそうになる。

見なくても

感じ取ってしまう瞬間がある。

離れて座っているのに、

聴覚も視線も、

同じ方向へと鋭くなる時間。

触れないのに、

どこかでかすめ合う感覚。

私はポケットの中で、

その名前の書かれた紙を

もう一度確かめた。

たった一枚の紙が、

こんなにも重くなるなんて。

バスは同じ道を走っている。

そして私は――

この一日が、

ただの偶然で終わらないことを

静かに願っていた。

その想いが、

いつかどんな形で戻ってくるのか。

あのときの私は、

まだ知らなかった。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


少しだけ、勇気を出してお伝えします。

この物語は、私の記憶に残る本当の出来事です。


誰にも言えなかった想いを、

今、こうして少しずつ綴っています。


もう少しだけ、この記憶にお付き合いいただけたら嬉しいです。




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