切られた髪は魂の……
切られた髪は 魂の残骸か
店を出るとすでに 真っ暗になっていて
私はそさくさと 上着を着ながら
寂しい細道を 足早に進む
夜の空気は 冷たくて心地よい
静かな路地で そよ風とすれ違い
頭の軽さと 涼しさを感じた
そして独特な ヘアリキッドの匂い
爽やかな香りに 気分がよくなる
なぜ何か月も 行き渋っていたのか
終わってみれば いいことづくめじゃないか
髪を洗うのも 乾かすのも早い
イヤホンもしやすい 視野も広がる
頭の違和感を 思い出すたびに
切られた髪の毛を 一緒に思い出す
床には大鋸屑のような 黒い房
それはかつて私の 一部だったもの
切られた髪は 魂の残骸か
違和感に慣れれば 考えなくなる
その程度の 感傷的な疑問だ
だかその数時間 私は苦しむ
帰って鏡を見る すっかり別人だ
スッキリした見た目で 気分も前向き
頭も軽くて ワクワクした気持ち
明日から新しく 何か始めよう!
だが頭の片隅には あの疑問
切られた髪は 魂の残骸か
「そんなはずがない それはただの髪だ
不必要で邪魔な 価値のないゴミだ」
きっとその通り。 私の悪い癖だ
無用で無価値で 無益で無駄なもの
そのようなものに 惹かれてしまうのは




