第1章 高校生は世界を想像した
これは、本当に見えるほど鮮明な想像で覆われた神話。
どこか儚げで、どこか惹きつけられる世界。俺だけが知る神話を少しだけ語るとしよう。
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後に、創造神と言われる二人の神は、光の籠ったモヤの中で生まれた。
一人はユリイェ。
横に広く、縦に短いその体躯は、小太りの酒好きな爺のようであるが、女の神である。強気な性格で、己の正義に固執する頑固な性格であり、もう一人の神と争いをよく起こしていた。知識と意地の神である。
もう一人は、チンペイ。
横に狭く、縦に長いその体躯は、干からびたコーンのようであるが、熱い心を兼ね備え、好戦的でユリイェとの争いには必ず応じていた。男の神であり、暴力と信念の象徴でもある。
二人は生まれてすぐ争いを始めた。ユリイェが拳を丸めてチンペイを殴る。
「チンペイ、なんでお前はチンペイなんだ。答えろよ。」
チンペイはその拳を避けて、焦った表情で答えた。
「知らない。俺は俺だから俺なんだ。ユリイェはどうなんだよ。」
チンペイはユリイェに右拳で殴りかかった。その速度、音をも超える。
ユリイェは目を木製の輪郭のように丸くした後、陳平の拳の軌道を全て看破し、カウンターを喰らわせる。したから振り上げた硬いユリイェの右拳はチンペイの顎を貫いて、鼻を顔から引きちぎった。ユリイェは言う。
「私はユリイェでなくてもいい。ユリイェである必要はないからな。けれどお前を殴りたい。それは私の思いであるに違いない。」
鼻がとれたその断片を右手で覆って隠したチンペイは口角をあげて呟いた。
「停戦だ。別の争いをしよう。このままでは面白くない。」
ユリイェは圧倒的な力を見せつけたのを内心喜び、陳平を見下しながら罵った。
「お前がどう思うとどうでもいい。私は私のしたいことをする。」
チンペイはいう。
「私が死んでしまったら争い相手がいなくなる。それは嫌だろう。」
ユリイェは黙った。拳の力は抜けて弛緩していた。チンペイは続ける。
「どちらがより多くの子供達を産み落とせるか、俺とお前で勝負だ。」
その声は光のこもったモヤの中で充満した。