二ツ目
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──それは長谷川少年が小学校に入学したばかりの頃。内気な彼は周囲と打ち解けられないでいた。
「──長谷川!」
そんな彼にも執拗に声をかけてくる相手がいた。その彼の名前は竹次郎。
「──お前知ってるか!」
「知らない」
「何がとか聞かないのかよ!」
竹次郎は長谷川少年とは真反対の騒がしい少年で、長谷川少年は彼がとても苦手であった。その為、彼に対する長谷川少年の態度は常に素っ気ないものだった。
だと言うのに彼は何が良いのか長谷川少年に絡んでくる。
「お前だって、学校の七不思議に興味があるだろう?!」
──いや、何故決めつけてかかるのか?
長谷川少年は竹次郎の思考が心底不思議だった。
「ない。そもそも怪談は夏にするものだよね? 今はまだ春だよ」
「いいや、今だ。早いに越したことはない!」
──いや、早すぎるだろう?
という言葉は面倒なので敢えて言わない事にした。
さて、長谷川少年の入学した小学校にも七不思議はあった……らしい。竹次郎に言われるまで長谷川少年は知らなかった。
トイレの花子さん、踊りの場の大鏡、桜の木の下の死体、音楽室のピアノ、動く人体模型、増減する階段、校長室の動く肖像画である。
竹次郎はこれを全て調査してみようと言うのだ。
帰ろうとしたところを引き止められた長谷川少年はうんざりした。
「これ、7つ中5つは真夜中にじゃないと確認できないよね?」
その事実を伝えると竹次郎少年はふんと胸を張った。
「学校に隠れて夜中になるのを待つんだ」
──何を馬鹿げた事を言っているのだ。
早く帰りたい長谷川少年は思ったが、口にはしなかった。
その後もあれやこれやと言って誘ってくる竹次郎が面倒になり、長谷川少年は彼を置いてそそくさた帰宅した。
この時の彼は、幾ら竹次郎であっても暗くなれば諦めて家に帰るだろうと思っていたのだ。
──しかしその夜、事件が起こった。
竹次郎が行方不明になったのだ。教師や竹次郎の両親が方方に彼の行方を聞いて回っていた事で長谷川少年も知ることになった。
幾人かの生徒が竹次郎と長谷川少年のやり取りを見ていたらしく長谷川少年宅までやってきたのだ。
その後小学校を捜索、真夜中のトイレの個室で竹次郎が倒れているのが発見された。
発見された時、彼は高熱を出しており、その後暫く学校を休んで来なかった。
その間、彼はトイレの花子さんに呪われたのだと同級生が噂をするようになり、なぜか一緒に行かなった長谷川少年は一部の同級生達から責められるようになってしまったのだ。