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一ツ目

 庭に植えられた桜の蕾は今年も膨らみ始めている。この桜の木を貰ってから既に三年目の春が訪れようとしていた頃──。


「──何を見てるんだ?」


 長谷川植物研究所の事務所内でにやにやと笑っているいとこ伯父の相馬に長谷川は何とも言えない面持ちで尋ねた。

 彼は「良くぞ聞いてくれました!」とばかりに手元のそれを長谷川のほうに突き出した。


「写真? 随分と古いな」


 長谷川はその写真を見て「ん?」と首を傾げた。その景色に見覚えがあったからだ。


「これは私が子供の時に住んでいた町か?」

「ふふ、やっぱり分かる?」


 にんまりと笑う相馬に若干の寒気を感じながら長谷川は頷く。


「ここ見て」


 相馬の指さした場所をみると、小さな人影が映っている。よく目を凝らしてみればその人影に長谷川は心当たりがあった。


「これは、私か?」


 そう、相馬が指し示していたのは、子供の頃の自分であった。


「そうそう!」と嬉しそうに頷く彼に長谷川は首傾げた。


「良く見つけたな?」

「いやぁ、仕事でこの町による用事があってね。写真館の前を通ったんだ。店の前に写真が陳列してあったから、もしかして君が映っているのではないかと思って探してみたらね、ほら?」

「見つけたと?」


 長谷川は米粒の様な自分の姿を見つけ出した相馬の凄まじい集中力に呆れながらも感心してしまった。


「ところで、君は此処で何をしていたのさ? 此処は通学路でもなかったし、友達の家の近所ってわけでもないでしょう? それに町中だから君の好きな植物があるとも思えない」

「そんなの覚えているわけ……?」


──そう言えば?


 何故、同じ小学校でもない相馬がそんな事を知っているのかという疑問は一先ず置いておいて、長谷川には一つ思い当たる節があった。


「もしかしてあの時の?」

「何々!?」


 興味津々に目を輝かせ身を乗り出した彼に嫌嫌ながら長谷川は「仕方ないな……」と思い出を語ってやることにした。





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