第7話 湖で魚を釣ってみます。
「暁、今日は湖で魚を釣ってみよう!」
ピクシーモマ達と暮らし始めて約1週間。
今日は天気も良くいつもより暖かいので、湖で釣りをやってみることにした。
釣り竿、網、クーラーボックスを持って家のすぐ近くにあるシュトル湖へ向かう。
『どんなお魚がいるかな?』
「まだ分からないけど、今日釣れたらその魚でごはん作ろうと思ってるよ。」
私がそう言うと、獲った魚がごはんになると分かった暁は見るからにやる気が上がる。
そんな暁に苦笑しつつ、私は無限収納の中からキャンプ用の椅子を取り出した。
「もし獲れたらこのボックスの中に入れてね。」
『わかった!シュッシュッってやるね!』
暁に獲れた魚はクーラーボックスに入れるようお願いして、早速湖へ釣り竿を投げる。
あとは魚がかかるまでひたすら待つだけだ。
――― ピクンッ
待つこと数分。どうやら魚がかかったようだ。
私は魚を驚かせないように少しずつ様子を見ながらリールを巻いていく。
そして、そろそろ魚が水面に上がってくるというタイミングで暁が器用に咥えた網を使って掬い上げた。
「獲れた!」
『とれたー!!』
暁とハイタッチをした私は、すぐに釣り上げた魚を鑑定する。
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【ピアンパーチ】
湖でよく見られる淡水魚。
脂肪が少なく淡白な味が特徴の白身魚。
焼き魚やフライなどに適している。
※シュトル湖に生息しているのは通常の2倍サイズ。
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『リリーこのお魚は食べられる?』
「勿論、食べれるよ。この調子でもっと釣ろう!」
『うんっ!』
1匹獲れたことで俄然やる気が出た私たちは、それから3時間ほど釣りを楽しんだ。
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【ピンクトラウト】
シュトル湖に生息する魚。
ローズピンク色の身は脂がのり肉質も柔らかい。
また新鮮であれば卵も食用可。
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【シルバーフィッシュ】
シュトル湖に生息する体長10cmほどの魚。
銀色の鱗で光を反射し、敵から身を守る。
群れで泳いでいることが多い。
フライにするととても美味。
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『たっくさんとれたねー♪』
「そうだね。最後はクイーンピンクトラウトも釣れたよ。」
今日の私と暁の釣りの成果は…ピアンパーチ12匹、シルバーフィッシュ33匹、ピンクトラウト7匹、クイーンピンクトラウト1匹の合計53匹となった。大漁大漁。
ほくほく顔で家に戻った私は、早速夜ごはんのメニューを考えることにする。
ピアンパーチやシルバーフィッシュはフライにするとして…
ピンクトラウトはどう食べよう。フライばかりだとつまらないし…
「そうだ。炊き込みご飯にしよう!」
ということで本日のメニューは炊き込みご飯とフライに決定!
まずは炊き込みご飯の準備から…
下処理を済ませ3枚におろしたピンクトラウトの身を1/3程度に切り、軽く水気を拭き取る。
しめじは根元を切り落としてほぐし、大葉は千切りにする。
そして酒、しょうゆ、みりん、顆粒だし、塩、水を研いだお米と混ぜ合わせ、その上にしめじとピンクトラウトの切り身を載せてスイッチを押せばあとは炊き上がるのを待つだけ。
さて、ご飯が炊き上がるまでの間にフライを準備するとしよう。
まずは下処理を済ませたピアンパーチは3枚におろし、その身をさらに半分に切る。
シルバーフィッシュはそのまま食べれるようなので、このまま使おう。
次に余分な水気を拭き取ったら軽く胡椒を振り、卵、薄力粉、水を合わせた衣にさっとくぐらせ、パン粉をつける。
そうしたら170℃に熱した油に入れ、きつね色になるまで揚げればフライの完成だ。
ついでにフライには欠かせないタルタルソースも作ってしまおう。
鍋に水を入れて沸騰させ、そこに卵を入れて茹でる。
その間に玉ねぎはみじん切りにして水にさらし、水気を切っておく。
ゆで卵が出来たら粗熱を取ってからボウルに入れて荒くつぶし、そこに玉ねぎ、パセリ、塩胡椒、マヨネーズを加えてよく混ぜれば罪深いタルタルソースの出来上がり。
一応、なるべく胃もたれを回避するためにキャベツの千切りと烏龍茶も用意する。
完成した料理をテーブルに並べ暁を呼べば、お待ちかねの夜ごはんの時間だ。
『んん!これすっごくおいしいよ。この黄色のソースつけるともっとおいしい!』
「それはピアンパーチのフライだよ。黄色いソースはタルタルソースっていうの。」
『僕、タルタルソース気に入った!!』
暁はタルタルソースが気に入ったようで、ソースを口の周りにつけながら一生懸命食べている。
「じゃあ、私も…」
そんな暁を見ながら、私も出来たてのフライに箸を伸ばした。
最初に選んだのは、シルバーフィッシュのフライ。
1口かじってみると、口の中に淡白で爽やかな味わいが広がる。
釣りたてだからか臭みや苦みもなくとても食べやすい。
レモンをかければさらに爽やかさが増して何匹でも食べてしまいそうな味だ。
次はピンクトラウトを使った炊き込みご飯。
ピンクトラウトとしめじの旨味がいい具合に溶け込んだごはんは、文句無しに美味しい。
千切りした大葉の風味がアクセントとなって、さらに美味しさを引き立たせている。
そして最後はピアンパーチのフライ。
まずは何もつけずに1口…癖もない淡白な味わいだが、身は程よく引き締まっていて弾力がある。
暁絶賛のタルタルソースをつけてもう1口食べれば、卵とマヨネーズのまろやかさがフライを優しく包み込んで美味しさをもう1段階上げてくれる。
「異世界のお魚も結構美味しいんだね。」
『またお魚獲って食べよー』
「そうだね。また今度釣りしてみよう。」
暁と2回目の釣りの約束をしながら、その後も2人で思う存分魚料理を味わった。