第5話 家庭菜園に挑戦してみよう。
最近、塩とオリーブオイルをかけたサラダにはまっています。
生ハムとチーズを入れると更に美味しいですよね。
寝心地抜群のベッドで朝を迎えた私は、朝食を作るためキッチンへ向かう。
作るといっても朝なのであまり手間がかからない簡単セットだ。
まず、食パン全体にマヨネーズを塗る。
次に、中心を空けた状態で4辺に塩胡椒で味付けしたほうれん草とベーコンを載せる。
そして中心に卵を載せたら、卵が半熟になるまで様子を見ながらトースターで5~10分ほど焼いていく。
トースターで焼いている間にサラダと、昨日収穫したラーズベリーを混ぜたヨーグルトを用意すれば簡単朝食セットの完成。
「あかつきーごはん出来たよー」
テーブルに完成した朝食を並べて、階段下から声をかける。
しばらくすると、まだ半分夢の中の暁がフラフラと階段を下りてきた。
『んんー…おはよう…』
「おはよう。朝ごはん出来たから食べよう。」
そう声をかけた私は、自分用のアイスカフェオレと暁用に牛乳を用意してテーブルに着く。
「いただきます。」と唱えたら、早速焼きたてのトーストにかじりついた。
とろっとした黄身とほうれん草が、サクサクの食パンと口の中で混ざり合って最高に美味しい。
『このサラダおいしいけど、何がかかってるの?』
「塩とオリーブオイルだよ。砕いたナッツともよく合うでしょ。」
『うん。おいしい。』
マヨネーズや他の味のドレッシングもいいけど、こういう朝食の時はシンプルな味付けが合う気がする。
生ハムやチーズを入れると更に美味しくなるんだよね。
そして、最後に食べるのはラーズベリー入りのヨーグルト…この世界にきて初の異世界の食べ物だ。
「んん、甘酸っぱくておいしい!」
ラズベリーよりも少し酸味は強いけど、ジャムやお菓子によく合いそう。
パン生地に練りこんでみるのもいいかもしれない。
そんな穏やかな朝食を終えた私たちは今、家の前に立っていた。
鑑定スキルのおかげでこの森でも食材調達は可能だが、スローライフに憧れていた私はずっと家庭菜園に挑戦してみたかったのだ。
「…というわけで、今日は家庭菜園に挑戦してみたいと思います!」
動きやすい服を着て気合十分な私は、暁と一緒に家の横に向かう。
まずは土を耕すところから始めよう。右手を前にかざして…
「耕せ」
――― ボコボコッ
一瞬で栽培に適したふかふかの土が出来上がる。
普通に耕したら1日かかりそうな作業を一瞬とは…土魔法が使えて良かった。
「次は畝か…整え!」
――― シュンッ
耕した土地に等間隔で綺麗な畝が現れる。
この森は通常より作物が育ちやすい環境のようだから、特別な肥料などはとりあえず必要ないだろう。
準備が整ったのであとは種や苗を植えてみるだけだ。
異世界の食材はまだよく分からないので、今回はネットで買ったもので試してみる。
「暁、ここにこのくらいの間隔で4~5cmくらいの穴を開けていってほしいんだけど…」
『いいよ!』
暁に種を植えるための穴を開けてもらい、私は穴に種を入れてどんどん土をかぶせていく。
今回は料理しやすいキャベツ、きゅうり、トマト、ナス、ピーマン、かぼちゃ、ブロッコリーを選んでみた。
『おいしいお野菜育つかな。』
「難しいことは分からないけど、きっと大丈夫じゃないかな。」
一通り植え終えたら、軽く湿る程度に水をまいておく。
「霧」
あとは育つのを待つのみとその場を去ろうとした時、隣にいた暁が呟いた。
『…これ、魔法使ったら早く育たないの?』
「魔法で?」
『うん。植物魔法を使えばできると思うよ。』
そういえば御魂様の加護のおかげで植物魔法が使えるようになっていたっけ…
そこで暁が言うならと、私は早速試してみることにした。
「育て!」
すると周囲に金色の粒子が舞い、種を植えた穴からニョキニョキと芽が出始める。
その後もぐんぐんと育ち、10分後にはすべての野菜が収穫出来る状態になってしまった。
慌てて野菜を鑑定してみると…
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【トマト】
リリーが育てた地球のトマト。
程よい酸味とみずみずしさが特徴。
異世界の神の加護により通常よりも栄養価が高め。
※迷路の森で育てたため1.5倍サイズになっています。
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「これってチートなのでは…」
どうやらすぐ育つのも、通常より栄養価が高くなっているのも御魂様の加護が影響しているらしい。
さすが五穀豊穣の神様…
暁は、私が驚いている隣で『わーい。できたー!』と呑気に喜んでいる。
『ねえねえ、すぐ育つなら甘いものも植えようよ。僕、イチゴとか食べたい!』
「…そうだね。この際、色々植えちゃおう。」
そうして半分やけになった私は、暁と一緒に家の周りに色々植えていった。
その結果、季節や法則を無視した野菜や果物が増えていき…
「これは最早、家庭菜園というより農園だよね…」
気づいた時には、とても立派な農園が出来上がっていた。
まあ、これでさらに生活がしやすくなったと思うことにしよう。
「魔法を沢山使ってお腹も空いたし、お昼にしようか。」
『賛成!』
「何か食べたいものある?」
『リリーの作るものなら何でもおいしいと思う!』
「じゃあ、採れたて野菜と昨日採取したバジェルを使ってパスタにしよう。」
『わーい。楽しみ!』
そんな会話をしつつ、私たちはお昼ごはんを食べるために家に戻るのだった。