閑話 転生記念日は、ちょっぴり豪華なすき焼きで。
山積みになっていたダンボールの片付けを終えた私は、今キッチンの前で悩んでいた。
「今日の夜ごはんは何にしよう…」
食材も調味料も色々揃えたおかげで大体の料理は作れる。
和食にしようか…洋食にしようか…それとも中華にしようか…
「今日は異世界に来た日だし、記念日ってことで贅沢にすき焼きにしよう!」
沢山悩んだ結果、今日は転生初日ということでお祝いの定番料理の1つ『すき焼き』を作ることに決めた。
お祝いなのでお肉は奮発して綺麗なサシが入った国産和牛を使うことにしたよ。
まずは、焼き豆腐と白菜を食べやすい大きさに切る。
ネギは根元を切り落とし1cm幅くらいで斜めに、春菊は5cm幅くらいで切る。
しいたけは軸を切り落として十字に切り込みを入れ、えのきは根元を切り落として食べやすい大きさにほぐす。
次に鍋に湯を沸かして、しらたきを入れて中火で1分ほどゆでる。
水気を切ったら粗熱を取り、食べやすい大きさに切っておく。
…これで大体の下準備は完了だ。
下準備が終わったら鍋に牛脂を入れ中火で熱し、そこにネギを入れたら軽く焼き色がつくまで焼いて取り出す。
そこに今度は牛肉を入れて両面をさっと焼く。
お肉に火が通ったら鍋の端に寄せ、残りの具材を並べたら最後に割り下を加えて全体に火が通るまで煮込む。
具材に味が染み込んだら、すき焼きの出来上がりだ。
ちなみに割り下は祖母直伝の醤油、みりん、砂糖、水を混ぜ合わせた割り下を使ったよ。
テーブルに卓上コンロを設置して完成した鍋を温めていると、リビングのほうから暁がやってきた。
『ごはん出来たー?僕、もうおなかペコペコだよ。』
「今、出来たよ。今日はこの世界に初めて来た日だからお祝いにすき焼きを作ったんだ。」
『すごく美味しそうな匂いがしてるね!』
「そうだ、食べる前に写真撮ってもいい?思い出に残しておきたいんだ。」
『いいけど、食べたいから早くしてね。』
そうして許可をもらった私は、暁を腕に抱いて素早く写真を撮る。
すき焼き単体の写真も残したら、お皿によそって暁に渡す。
「熱いから気を付けて食べてね。」
『うん!いただきます!…ふーふー…あちちっ…』
一生懸命冷ましながら食べる暁を眺めつつ、私もすき焼きを食べ始めた。
甘辛く煮込まれた白菜とお肉を溶き卵にくぐらせ口に運ぶ。
味の染み込んだ具材と卵のまろやかさが絶妙に絡み合っていてとても美味しい。
「うん。美味しく出来てる。」
『僕、これも好きっ』
暁も気に入ったようで、ずっと尻尾を振りながら食べている。
具材の中でも特に焼き豆腐がお気に召したようだ。
「お腹に余裕あるなら、締めにうどんいれるけどどうする?」
『うどんも食べる!』
「わかった。ちょっと待っててね。」
私はキッチンに向かうと冷凍庫から冷凍うどんを取り出し、レンジに入れて解凍する。
解凍出来たうどんを鍋に入れて軽く煮込めば、締めの完成だ。
『っ!?ちゅるちゅるしておいしい!』
「親子丼にも出来るんだけどこっちのほうが簡単だし、今日はうどんの気分だったんだ。」
『親子丼も今度食べてみたいな。』
「じゃあ、今度作ってあげるね。」
そんな約束を交わした私たちは、お腹がいっぱいになるまですき焼きを堪能したのだった。