神国日本は健在なり
数年前限定核戦争が勃発した。
北半島国が保有する全ての核ミサイルを南半島国と日本国に撃ち込んだ事により勃発。
2カ国は放射能に汚染され滅亡。
北半島国も西の大国と我が国が傍観する中、海の向こうの大国から撃ち込まれた報復の核ミサイルにより同じく滅亡した。
私が操縦する戦略爆撃機は滅亡した北半島国の近くにある空軍基地から飛び立ち、日本国でただ1箇所生き残った沖縄にある海の向こうの大国の基地の偵察に向かう。
沖縄に向けて日本海を南下し対馬海峡を抜ける。
眼下に見える半島は焦土となった焼け野原が広がっているが、日本国側は核ミサイルが着弾して壊滅した筈の都市が、何故か戦前に撮られた写真と同じ姿を我々爆撃機の乗員に見せていた。
沖縄本島の回りを反時計回りに飛び、帰りは太平洋を北上する。
太平洋から津軽海峡に入ったとき副操縦士が声を発した。
「不味い! 陸地に近寄り過ぎている」
副操縦士の声が終わる前に、コクピットの窓の前、爆撃機の機首に白い人の形をした霊のようなものが飛び乗り警告の声を発して来る。
「此処は神国日本です。
人間が近寄る事は許されません、退去しなさい」
私は首をガクガクと縦に揺すり、操縦桿を操作して爆撃機を海峡の真ん中に戻す。
日本国は滅んだが、神の住む神国日本は未だ健在なのだった。