【99】 変異種モンスター
ついに【帝国・レッドムーン】だ。
あとほんの僅か、目と鼻の先。その全貌が見えているし、手を伸ばせばそこにある。徒歩で一日掛けてやっと到着だ。
実は一泊だけ野宿をしており、そこについてはまた思い返すこともあるだろう。
「やっとここまで……。なぜかゴブリンの湧き具合が異常だったけどな」
「カイト、ちょっと怪しいですよ。またシャロウが仕掛けているのでは」
前屈姿勢で息を乱すミーティアは、呼吸を整えながら言った。
「そうだな。隠れて俺たちに嫌がらせしているかもしれんな。でもこっちの勝ちだな。もう到着だし」
「帝国かぁ、久々に帰って来たわ~」
汗ひとつ掻かず疲れを全く見せないソレイユは、身体を伸ばして感慨深そうに目を細めた。さすが、一人の軍隊にして帝国の騎士。あんな険しい登山もしたというのに余裕だな。
「ミーティアちゃん、ソレイユ、それにカイト様。ヒールしておきますね」
風に揺れるクリーム色の髪。それを押さえながらルナは順に、治癒を施していった。中でも体力のないミーティアは顔色を悪くしていたが、ルナのヒールのおかげ小躍り出来るくらいには良くなっていた。
俺も疲れが絞り取れた。
一週間分は抜け落ちたかもな。肩が軽すぎて絶好調だ。ルナのヒールはなぜか回復力が異様に高くて、状態異常すらも回復しちゃうんだよね。
――さて、ついに帝国に土を付ける時が――
しかし、その時だった。
後方からドタドタと音がした。大きな足音。
かなりデカイ、まるで巨人のような!?
『グォォォォォォ~~~!!!』
「げ、変異種のボスゴブリンだと!? とんでもないスピードでこっちへ来るぞ……! ルナ、ミーティアは俺とソレイユの後ろへ!」
「カイト! アレはレッドゴブリン『Lv.4050』よ。あたしがヤツを引き付けるから、あの赤いのをレベルダウンして! お金、余裕あるでしょ!」
ソレイユは慌しく聖剣を構え、言った。
そうだな、それがいい。金より命だ。というか、ここまでやっとの思いで来たんだぞ。それを阻まれてたまるかってーの!
「分かった! レベルダウン開始!!」
変異種『レッドゴブリン』のレベルをどんどん下げていく。その間にも激しい動きでデカすぎる棍棒を振り下ろしてくるが、それをソレイユが聖剣で受け止めた。
「ナイス!!」
――ああ、そうだ、自分には唯一無二の能力がある。これが俺の真骨頂。大切な仲間を守る為の最強のスキル――!




