【97】 霊峰・ベルク山
現在――霊峰【ベルク山】の頂。
標高3,000メートルのこの山から『帝国』を望んでいた。
「おぉ、雄大で良い眺めだ。帝国全体が見渡せるな」
「素晴らしい景色です。あのずっと奥まで広がる街並みこそ――【帝国・レッドムーン】なのですね」
うんうんと感激するルナは、珍しくテンションが高かった。
彼女の言う通り、果てしないほどに街が続いていた。帝国は寥廓たる大陸が永遠と続き、来た方向には【中立国・サテライト】が。
俺たちがいたセイフの街はそのサテライトの自由貿易地域。経済特区。しかし実際には『帝国』の支配が及んでいるで、殆ど変わりはないが。
それから更に南方に【共和国・ブルームーン】である。
流石にこの場所からでは見えないけどな。
「へぇ。こうして俯瞰風景で一望するのは初めてかも。まあ久しぶりね。ずっと、セイフの街にいたしさ。なんだか向こうが故郷だったみたいな変な感覚」
「ああ、でもそうか。ソレイユは里帰りになるのか」
「ええ。知り合いとかめっちゃいるからねぇ。これから、大変よ~」
ミーティアを抱えつつ、手をヒラヒラさせるソレイユ。そうか、やっぱり『帝国の騎士』なだけあり、有名だろうしなぁ。男も寄ってくるのだろうか。
セイフの街でもナンパされまくって凄かったし。
「あの巨大建造物はなんですか?」
ルナは長い髪を靡かせ、指さしていた。
それは、この遠方であるこの霊峰から見ても目立ち、必ず視界に入るほどだ。お城というよりは『塔』が聳え立っていた。
それは超巨大な塔だ。
かつて俺の世界には『バベルの塔』なんてものがあったが、それを遥に凌駕する規模だった。あの塔の名は――
「オルビス」
俺が答えるよりも先にルナは語気を強め、言った。
「――あれ。なんだ知っていたのか」
「ですよね? 実は……神話の本で読んだことがあったのです。ごめんなさい、カイト様。わたし、出過ぎた真似を……」
「どうして謝る。本で知ったのなら、それは貴重な知識であり知恵だ」
そっか。それくらい本に載ってるよな。
……でも、あの一瞬だけだが、ルナの印象が変わった気がする。一言を発しただけなのにメイドというよりは――まるで。
いや、気のせいだ。
ルナはルナだ。可愛いメイドなんだよ。
「よし、みんな。下山するぞ!」




