【91】 二兎を追う者は一兎をも得ず
「ソレイユ様、ウソはいけませんよ」
即座に誤解を晴らすとクレールが呆れた顔をし、ソレイユを咎めていた。因果応報。
当然の結果である。
「――とにかく、あんたら二人は先に帝国へ戻りなさいよ。あたしは、カイトと行動を共にするの。いいわね、これは上官としての命令よ」
「う……!」「それはずるい」
クレールもアメリアもさすがに『命令』と言われてしまって、反論できない状況に陥っていた。てか、ソレイユって本当に『上官』だったんかい。ますます、存在感が高まっていくな。ま、でも当の本人は地位とか気にしていないみたいだが。
「……仕方ありませんね。この件といい、シャロウメンバーの争乱といい、全て皇帝陛下に報告させて戴きますからね」
「うん。そうして。じゃあね、クレール」
「もー、ソレイユ様……」
「相変わらず頑固だね~」
二人とも呆れて店を後にした。
なんだか騒がしかったなぁ……と、ルナを待っていれば、ちょうど本人が店の奥から現れた。今日もクリーム色の髪やメイド姿が一糸乱れず。きっちりとした身嗜みをしていた。この几帳面な性格が好きだな。
「おはようございます。カイト様、ソレイユ」
「おはよう」「おはよー、ルナ」
「あの~、何かあったのですか?」
「ソレイユの部下が来ていたんだよ」
「そうなのですか。それは会ってみたかったです」
俺が説明すると、ルナは興味津々だった。
「明るくて可愛らしい二人だったよ。帝国の騎士というだけあり、容姿のレベルはかなり高かったな。クレールは高嶺の花って感じだった。もう一人のアメリアって娘は天真爛漫だったね。二人とも華があったなぁ……店のアルバイトとして採用したい」
「ダメよ、カイト。あのコたちはあたしの部下でもあるの」
「ん、お前は一人の軍隊じゃないのか?」
「特権だし、騎士団に属していないわけじゃないから」
なるほど――と思いつつも、俺はルナの横顔を眺めていた。以前にプレゼントした黒いリボンが似合ってる。
「あのカイト様?」
「……いや、なんでもないよ」
まあ、ルナにソレイユ、ミーティアがいれば十分すぎるな。これ以上は贅沢すぎて天罰……いや、天変地異レベルの神罰が下るかもしれん。
二兎を追う者は一兎をも得ず。
今は『帝国』の移住だけを考えればいい。
「――で、そろそろ帝国へ?」
「そうだな、ソレイユ。ルナも準備いいよな」
「ええ。あとミーティアちゃんを待つだけです。もうすぐ来られるかと」
「分かった。じゃあ、外で待つか」
「はいっ」




