【80】 漢として
幸せを感じすぎて思考回路が壊れつつあった。俺は次第に理性を失い始めてしまい……今だけは商人ではなく、ただの漢として彼女を求めた。
「ルナ……その、俺は――」
彼女の頬に手を伸ばし、自然に寄せていく。
ルナもまんざらでもないようで、柔らかそうな唇が緩慢に接近してくる。……多分、きっと、お互い雰囲気に流されるままだった。
あとは気持ちを確かめ合――――
『ゴッチ~~~~~~~~~~~~~~ン!!!!!』
あと数センチのところ、
俺の顳顬に『ハンマー』らしきモノが衝突した。
重すぎる衝撃によって吹き飛ばされていく。
「いでえええええええええッ!!!」
こ、この異形ハンマーは聖剣『マレット』。
つまり――あの赤ビキニ・ソレイユの武器である。ヤツめ、投球モーションで思い切りブン投げてきやがったな……。
「ソレイユ、おま……! 俺のレベルが低かったら死んでいたぞ……」
「死なない程度に抑えてやったのよ。ていうか、あんた、ルナを押し倒して何やってるのよ。しかも、あたしとミーティアの前で!」
「はぁ? ……おし? うわぁっ!」
気づけばルナは、顔を真っ赤にして仰向け状態。ちょっと乱れているし……なんて光景だ! アレはどうやら俺がやったらしい。……やば、理性完全にぶっ飛んでいたわ。ルナの魅力すげぇ。
「押し倒しちゃってごめんな、ルナ」
「…………残念です」
「え? ごめん。何て言った? 声が小さすぎて聞こえなかった」
「い、いえ……。それより謝らないで下さい。わたしは別にカイト様になら……何をされても嬉しいですし……」
「!?」
語尾が弱々しいのでよく聞こえない。
「カイト。ルナに見惚れていたのですね。そうはさせません! さあ、カイトもこちらへ!」
元気いっぱいのスク水ミーティアに腕を組まれ、海へ引っ張られていく。
「うわっ……近いって。当たってるし……」
「じゃあ、これで借金ちょっと減らしてください」
「し、仕方ないな……って、なるか! この程度で減らすかってーの」
「むぅ。では、エルフの魅力を分からせますっ」
「お、おう」
ま……少し頭を冷やすか。
それに、せっかくの海だからな。遊びまくろう――。




